健康の話 ー(3)

自然治癒力高める

 自然治癒力はDNAの記憶により一度構築されると、万人に同一で強固な機能が永
続的に保証されるものではなく、特に免疫システムは変化しやすい側面を持って
おり、人種間、年齢別にもかなりの差が見られ、又、遺伝的な要素もあるのでは
ないかともされる。年齢間の機能の変化は著しく、一般に30才前から機能衰退
が始まり、60歳を過ぎるとピーク時の5分の1以下に迄落ち込む。これらから
個々人の免疫力の差も大きくあり、いかにして弱い人が強化し、強い人がこれを
維持するかは健康にとって極めて大切で、ここにその強化、維持にとって好まし
影響を与えるであろう、と考えられる方法を11項目を挙げる。参考にされたい。
(1)過食、偏食、不規則食事をやめ、有害添加物の多い
ジャンクフードの類いは避けて出来るだけ自然に近いもの
を必要、最適量、バランスよく、かつ楽しく摂る食事をす
る。 エネルギー源としての炭水化物、タンパク質、脂
質、生体機能維持や調整力、抵抗力のためのビタミン、ミ
ネラル類、大腸機能維持に欠かせない食物繊維、細胞を保
護するSOD(スーパーオキシドデイスムターゼ)のための
抗酸化系食品の7種をバランスよく摂る事。(免疫力を強
化、調整する食品群を参照)決して動物性タンパク質、脂
質に偏る事なく3大栄養素以外のビタミン、
ミネラル、食
物繊維と抗酸化系食物を軽視しない。又、お腹一杯食べる
習慣から脱却し、腹7分を満腹と感じる習慣を付け、可能
な限り胃腸の負担を軽くする。
ビタミン、ミネラル、
食物繊維豊富・抗酸
化力の玄米ご飯
(2)ストレスを溜め込まない。 日常生活の中でストレスが生じない工夫をし、
生じたとしても休養や転換を計り中に溜め込まない様にする。強いストレスが一
定期間続くといろんな方面から人体機能はほころびを見せ始める。逆にストレス
から解放されると、医療なしでもこれから発症した病は快方に向かうのは良く知
られている。ストレスにより大脳の扁桃体が不快を感じると脳内の視床下部の興
奮が引き起こされ、脳下垂体から副腎皮質ホルモンの一種が分泌され、コルチノ
イドの分泌を通じて免疫物質を送り出しているリンパ球の減少に至り、免疫機能
の低下から心身の変調を招く。休養、気分転換、運動を日常生活の中にリズも良
く組み込み、社会的ストレスもストレスとして受け止めず、むしろこれをエネル
ギー源として捉えられるゆとりと気持ちの面の力を持つ事が望ましい。日常生活
の中で何がストレスかは自身では判別出来ず、それへの対応のないまま心身の変
調に至り、長引かせ病となる。ストレスを感じる、感じないにかかわらず、休養、
気分転換、運動を工夫して毎日の生活の中に組み込んでしまう事はストレスを溜
め込まない一つの方法。
(3)規則的で質の良い睡眠を取る。 人は睡眠によって脳、身体、神経系を一
定範囲でリセットする。良質で必要量の睡眠は生体の機能維持には不可欠。身体
機能の休息、記憶の再構成、成長ホルモンの分泌、全身の新陳代謝促進、ストレ
スの除去等、睡眠は生命維持には欠かせない要件であり、完全に一定期間断つと
死につながる。余談ではあるが昼寝はこれの短時間版とも言うべきもので、午後
1時頃から3時頃迄の15分から30分くらいが良いとされ、アルツハイマー病
の予防や血圧異常の改善にも効果があるとされ、又、ホルモン物質の一種、メラ
トニンにより活性酸素を減少させ、免疫力も向上する。逆に睡眠の乱れは体内異
質物の探査やそれを攻撃、死滅させるNK細胞や体内有害物質を貪食除去する好中
球の活性低下につながり、ここから免疫機能の弱体化を招く。
(4)五感をフルに使った有酸素運動。過度でない楽しくやる有酸素運動の健康
への効用は心身の機能の様々な面に見られ、代謝の促進やストレスの解消等はそ
こからも当然免疫機能を向上させるが、運動そのものも免疫機能の重要な要素で
あるNK細胞の活性化を促進し、継続した運動習慣を持つ人は持たない人に比べて
免疫能力が高い事は証明されている。ただ、運動のやり方が問題で単発的に激し
い運動を2時間以上行つたりすると免疫機能は著しく低下するとされ要注意。1
日の中で有酸素の運動を楽しく、リズムよく、五感をフルに使って計画的、継続
的にやる事がいっそう効果的。
(5)体を冷やさない。人体は一定の体温を保つ事により、始めてその細胞の機
能を維持するが出来る。体温が上昇した時は 発汗し、水分、塩分のバランスが
崩れこれを恒常性維持機能が修復しようとするが、限度を超えた状況ではこの機
能は破綻し、熱中症等として発症し、場合によっては死に至る。体温低下の場合
は低体温症として発現する。これは消化酵素の働きが鈍化し、消化器系が阻害さ
れ、ブドウ糖の代謝が低下し、アデノシン3リン酸の減少により筋肉、器官、神
経等、全身の細胞へのエネルギーの供給が滞り、機能の停止等として致命的な状
況となる。ここ迄極端な体温低下に至らなくとも、体温の1℃の低下は細胞の活
性低下から免疫能力は6分の1になるとされ、体内細菌に対する抵抗力の低下、
腸内細菌のバランスの悪化他として現れ、循環系、消化器系、神経系、又はアレ
ルギー症等の疾患の芽になる事はあまり知られていない。一般に急激な外部環境
の変化に対しては俊敏に対応するが、緩やかな変化に対してはガードが甘くなる
傾向があり、日常生活の中でよく見られる、戸外での長時間にわたる寒さの辛抱、
濡れた衣服のままでいる、効き過ぎの冷房の部屋、等は体の内部機能迄損なって
いる事になる。
(6)抗生物質や一般の薬、及び医療に安易に依存しない。
1929年フレミングによって発見された抗生物質は様々な感染
症に対し劇的な威力を発揮し、一時、人類は感染症から完全に解
放されたかに思われた。しかし、結核をとってみても今日、世界
における年間死亡者数は300万人とも言われ、単一疾患による
死亡原因ではトップであり、衛生環境の整ったアメリカ、日本で
も近年、患者数は漸増している。原因は明確には特定出来ない
が、やはり警戒感の欠如と耐性菌の出現であろうか。菌自身も生
き延びるための独特のテクニックを持っており、単一の抗生物質
や、これの長期にわたる継続使用に対し、対抗する術を養い、変
身していつしかこれを効かなくさせてしまう。これが耐性菌で、
アレクサンダー
フレミング
1881〜1955
この耐性菌に対する更なる抗生物質にも、やがて新たな耐性を獲得し無力として
しまう。これの繰り返しでは菌は死滅せず、病は治らない。初期の安易な抗生物
質の乱用が小さな怪物を恐るべきものに変身させてしまった。大きく見ると、こ
の様な事も自然治癒機能をより困難な状況に追い込んでいると見られる。
一般の薬の乱用が自然治癒力を衰退させる現象もこれに似ている。風邪薬をとっ
てみても、原因であるウィルスを完全に死滅、排除するためのものでなく、風邪
の周辺諸症状を緩和するだけであり、これで治ったと錯覚するもので、風邪の根
治はもっぱら自然治癒力によるもので、むしろこの薬の乱用は自然治癒の過程を
混乱させ、遅らせる要因ともなり得る。
生体機能は使わなければ衰退する、本来、自然治癒システムの発動で充分治る範
囲のものを、電子医療機器等の物理的外力や、薬の化学的力に頼り切っている
と、いざ、自らの体の底力が必要な時、その人の自然治癒力は頼りないものに
なってしまっている。元来、外からの医療と、内からの自然治癒力の両輪を噛み
合わせて病を治すのが基本である事に違いはないが、今日、この内なる力の自然
治癒力を軽視し、外なる医療にあまりにも寄りかかり過ぎている風潮は病の発生
と治癒にとって、より困難な状況を作り出していると言わざるを得ない。
(7)喫煙は厳禁。 タバコのニコチンは呼吸器系、血管、神経系に重大なダメ
ージを与え、ここから来る自然治癒力の低下は言うに及ばず、あらゆる面から健
康にとって有害であり、更に社会にとっても今日、公共の場所での喫煙は排除さ
れるべきものとの認識は世界共通のものとなっている。
(8)飲酒は控えめに。 摂取した酒に含まれるアルコールは主として胃と小腸
で吸収されるが、この代謝物であるアセトアルデヒトは高い毒性を有し、各所に
分散して悪性の病の素因となる。もちろん、たいていは肝臓で分解され、無害化
して尿として体外排泄されるが、一定量を超えた飲酒では肝臓で分解しきれずア
セトアルデヒトの発生や免疫力の低下を生み出す。
(9)毎日よく笑う。 主に内臓器官の働きをコントロールする自律神経の交感
神経と副交感神経は拮抗して働き、身体の様々な器官に作用し、人の意識とは無
関係に自律してこれらを最適にコントロールしている。交感神経はどちらかと言
うと緊張状態になった時、体にその準備を整える事を促す役割をし、副交感神経
はその逆で緊張を解き、安心モードを準備させるもので、例えば脈拍を遅くし、
血管を拡張させ、血糖値を低下させ、胃腸を活発化させる指令を出す。笑うとこ
の副交感神経が優位な状態となり、身体の様々の器官に好ましい刺激が与えられ
る。血圧を下げ、心臓が活性化され、血液中の酵素が増して循環系に好影響が与
えられ、消化器系が元気付き、免疫機能の重要な要素のNK細胞が活性化される。
又、交感神経と副交感神経の頻繁な切り替えにより、免疫機能を活性化させるホ
ルモンの神経ペプチドが全身に分泌され、免疫力が向上につながる。笑いの健康
への好影響は近年、特に注目され始めた領域で、解明されていない部分も多いが、
医師に見放された難病の患者さんが、毎日の大笑いとビタミンCの大量服用で完治
させ、職場復帰を果たした例等の報告は数限りなく、今日、病院で「笑いの療法」
を何らかの形で正式に実施している所は増加していると言われる。
(10)五感を使って自然に接する。 人は朝日の上昇に前後
して屋外に出て活動を始め、日没に前後して終了し、休息と補
給をする。気の遠くなる様な長い年月、これを繰り返し、培わ
れた自然治癒力は当然、自然な生活のスタイルの中で有効に機
能するもので、昼夜の逆転した生活や室内に閉じこもったまま
の特異な生活は生理機能を変調させ、長期間続くと免疫機能に
悪影響を及ぼす。もともと室内に閉じこもったり、人工物に取
り囲まれた生活はそれ自体でストレスを抱え込む事となり、免
疫力の低下を招くが、自然を遮断した長期間に及ぶ生活は生理
機能の変調とも相関して自然治癒力を衰退に導く。自然に出て
風、音、景色を五感で感じ、心動かされる事を習慣ずけるのは
自然治癒機能を健全に維持する上で欠かせない。
城ヶ崎の森探索
(11)健康の維持増進に強い意志を持つ。 健康を維持増進する強い意志と、仮
に病にかかったとしても「治る」と言う明確なイメージと、「直してみせる」と言
う強い意志を持つ事がこの維持と回復の最も基本の要件。「自然退縮」と言う現象
がある。治療の道を断たれた末期の悪性病の患者さんが一切、医療にかからず、治
りたい強固な願望と、直してみせると言う強い意志と、完治する明るい
イメージを
持ち続け、ついに、いつの間にかこの病巣を消滅させたと言う現象で、これは怪奇
現象でもミステリーの世界でもなく、本当にあった事例で、1993年にアメリカ
のノエテックサイエンス研究所から出された報告では、この様な劇的なものを含め
て自然退縮の症例が1051件記されているとされる。自然治癒の現象には未だ解
明されていない部分も多く、体内から様々な物質が治癒のため分泌され、自然治癒
を機能させているとされるが、人体のこのシステムは病状のいかなる場合でも治療
を放棄する事なく、見えない世界で自然治癒をゆるやかに進行させているのではな
いか。自然治癒システムはまさしく比類なき名医であり、これを強力にサポートし
続ずけているのは間違いなく本人の強い希望と意志であろう。
本文は一般的に認められるとされる事項から構成しました。-青い風-