平成18年「祈りその後」(仮称)NO.1

 


7月31日(月)

民のため身を磔刑(たっけい)にささげしやイエスキリスト佐倉惣五郎

美しき二つのJと言い給いしイエスキリストと日本(にっぽん)のことを   

(注)内村鑑三の言葉。美しき二つのJ、イエスキリスト(JESUS CHRIST)と日本(JAPAN)。

7月29日(土)

麻酔して折れし前歯を抜歯せりこれも生きゆく営みとして

岩を打ち飛沫(しぶき)を上ぐる白波の飽くことのなきこれの営み

7月27日(木)

製材の木を引く音の静まりてふたたび聞こえる蝉時雨の音

蝉時雨降りくるなかに座りおりここの社(やしろ)は風吹き通る

椎の木の巨木の根方に座しており風吹き通り蝉時雨ふる

日盛りを歩み来てわれふらふらとここの社に吸い込まれたり

自動車の行き交(か)う道を遠く見てここの社に汗拭くわれは

7月26日(水)

妻が子と長電話する傍(かたわ)らにわれ料金を気にかけている

たわいなき会話するうちたちまちに時間が過ぎる妻の電話よ

久々の子よりの電話楽しげに会話交わせる若やいだ妻

7月25日(火)

ひと月はとうに過ぎるにわが家のつばめは卵を抱きて籠もれり

サルビアを離れ槿(むくげ)に止まりたり大ぶりにして黒揚羽蝶

朝方はあんなに潮が引いしに昼過ぎの浜はもとに戻れり

切り岸に潮風受けて縋りいる鬼百合咲けり叫ぶごとくに

7月24日(月)

汗ながし刈たる草が一夜経て憩えるごとく朝の露置く

曇り空むしろ肯(うべな)うごとくにも蓮の滴(しずく)は真珠色せり

増水の小川の水が堂々とその存在を示し流れる

濁流となりたる波よ方舟(はこぶね)を早よう造れと言わんばかりに

台風のごとき梅雨(ばいう)よいとけなき毬栗(いがぐり)たちを甚振(いたぶ)りている

7月22日(土)

はまゆうは小雨にぬれて静かなり黒揚羽蝶止まり動かぬ

雨上る渚の道に浜木綿のその白き花しづくたらせり

黒船を模して造れる遊覧船カモメをあまた連れて巡れる

7月21日(金)

タレントを捨て去ればそれでOKか欽ちゃんは球団を解散するに

吉本の社長の責任あらざるや欽ちゃんは球団を解散するに

大衆の笑いのお陰で成り立つに思い上がるか吉本興業

不祥事の社員を首にする前に社長がなすべきことあるだろう

7月18日(火)

沼商を出(い)でたるわれは見つけたり明石海人が先輩なるを

切岸に群生なせる鬼百合に黒揚羽蝶寄りて憩える

あじさいの色も褪せたり梅雨晴れの日射しのなかにこころ乾けり

椎の木の根方におれば梅雨晴れの日射し遮り蝉しぐれ降る

7月15日(土)

防波堤下田の湾を囲むなり今日もやさしき波が寄せくる

梅雨晴れの陽射しを避けてこの日陰あそこのひかげと遠回りする

椎の木の日陰に休めば久しぶり夏うぐいすの囀りの声

椎の木の枝を揺すりて吹く風に噴きたる汗が鎮まりてゆく

7月12日(水)

優秀な少年だった運動も勉強も出来四十(しじゅう)で逝きし

名門の沼津東に入学し東大目前君の挫折は

リヤカーに屑物運び夜(よ)になると近所の子らに英語教えき

商船の大学を出(い)で外国を巡りしという屑半(くずはん)さんは

三畳の小屋を住まいにみかん箱机となして教えくれたり

高校の合格告げに行きしわれ屑半(くずはん)さんはどこにもおらず

幼き日英語をわれに教えくれ突然去りし屑屋のおじさん

発音に厳しかりしもV、L、R、子音、THの舌いまだ忘れず

色々な人との出会い重ねるもいずれも深くならず過ぎたり

7月11日(火)

子の歌をまとめ歌集にすることを思い焦がれて一年余り

障害を持ちて生まれしわが子のこと歌に書けども書き足らぬなり

障害がなければないで色々な問題起きんこの子の一世(ひとよ)

7月10日(月)

眠りから醒めたるごとくひまわりがそのつぶらなるまなこを開く

開かんとする向日葵はういういしつぼみは睫毛(まつげ)のごときものもち

合歓の木はうす紅色の花をつけ夕べの光を受けてかがやく

つるは皆逃(のが)れる意志をもつごとくフェンスを上にうえにと登る

丈(たけ)高きフェンス越えたる朝顔の蔓の先にて花がふるえる

7月8日(土)

本箱に放置せし本売れたれば埃を叩(はた)き汚れを拭う

もう少し大事にすればよかったな売られる蔵書叩きつつ言う

あじさいの剪定かなし花首をばっさばっさと切り落しつつ

梅雨晴れのもとに茂れる草叢(くさむら)に夏こおろぎのほそほそと鳴く

7月6日(木)

波の間(ま)に浮びていたる一本の竹ざおやおら立ち上がりたり

わが裡(うち)の思い も少しのびやかな言葉の歌となりて出(い)でこよ

真昼間に檻に飼われるフクロウが丸き眼(まなこ)を見開いている

7月3日(月)

晩酌を止めて今宵も幾ばくの聖句を読みて心足りたり

死に体を呈するわれの蔵書たち廉価で生きて誰(たれ)か育てよ

7月2日(日)

秋口のごとき怪しき風吹けば水田(みずた)の稲の右往左往す

ネットにて本を売らんとするあまり半値以下とす相場無視して

古本を生業(なりわい)とせず気まぐれに半値以下とす相場無視して

売れる本なきやと棚を探しつつ出(い)で来し本をしばし読みたり

7月1日(土)

三食の食事を趣味と言わぬごと読書も同じと宣(のたま)いし師よ

わが家は冷暖房が完備なり冷房は冬暖房は夏

わがことの全ては神に任せんか泣くも笑うも神のはからい

6月30日(金)

ひまわりは日ごとに背丈伸ばしおり青き蕾の瞳つむりて

罅割れや年輪までも似せておりプラスチックで作りたる杭

金繰りを危ぶむ心見透かすかATMめ中止表示す

6月29日(木)

海面に鈍き音する飛び跳ねし魚が再び落下する音

係留に使うか鉄の鎖あり長々浜に錆びて横たう

草むらに小さなボート船底を光に向けて安らぐごとし

返品のダンボール箱積まれいる自費出版をしたるわが夢

梅雨晴れの強き光は容赦なく桃色に咲くあじさいに差す

6月27日(火)

金繰りに窮するわれは幾ばくの金を求めて蔵書手放す

わが本を求める人の出現をネットに載せてひたすらに待つ

コレクター商品として幸綱氏サインなしたる本も載せたり

価値あると思う蔵書をネットにて売りに出せども買い手が付かぬ

ネットにて売りに出せども反響がなければ値段を下げる外なし

松陰の潜(ひそ)みし島はひっそりとして夕波が赤くうち寄す

金網に蔓巻き登る朝顔がフェンス乗り越え風に揉まれる

6月24日(土)

用水に迷い込みたる鮎ひとつ腹上(うえ)にして流れゆきたり

御神灯ともすことなくみ社の灯篭の笠欠け朽ちている

み社の天神宮はあうんの二対の象を門柱に付くる

慰霊碑は日清日露日独と満州支那の戦いのもの

雨降りて水量増したる落ち水か水田(みずた)潤おす音が聞える

子の意志で医師になるのは良きことぞ協力をしな強制でなく

6月23日(金)

剣道に青春燃やすそれもよしそう慰むる者なかりしや

神童でなれば生きる道なしと思いつめしや十六にして

古都に生(あ)れ剣道好む少年よ殺人を悔い短歌やらんか

6月22日(木)

さ迷いし果てなるわれや妻や子に何するとなく過ぎし歳月

父母(ふぼ)が医師医師を目指しいていたる子が母(はは)弟妹(ていまい)を焼き殺したり

前途ある十六才の少年よ放火殺人に駆り立てしは何

6月21日(水)

泣きごとを言って一生費やすかよせよせそんな人生はよせ

日本の高温多湿に幾世代耐えきて今のわたくしがある

夏暑く冬寒ければ日本の野菜が育つ人間もまた

繋(つな)がるる家畜のごとく川べりに数十隻の小船が浮ぶ

十字なすマストを高く掲げおり湾に静かに係留をして

6月18日(日)

姦しく巣に啼きおりしツバメ五羽最後の一羽も巣立ちしたらし

南天の白き小花の咲き初めて五羽のツバメは旅立ちにけり

ステータスのごと持ちいたるプルターク英雄伝も売りに出したり

ベンジンで汚れをぬぐいプルターク英雄伝を人手に渡す

6月14日(水)

いつまでも巣立ちの出来ぬ子つばめよ少し離れて親燕おる

喉いまだ黄色み帯びる子つばめが巣に縋りつつ羽ばたきをする

成長に遅速のあらん巣にいまだ留まりている子ツバメ一羽

夕日受け大きくなれるわが影が腕まくりして小走りに行く

滝つ瀬に落ちなんとして鴨一羽重き体を羽ばたきにけり

西日差す水田(みずた)の面(おも)の油照り荒らぶるアラブのテロいつ止むや

6月13日(火)

潮引きて広くなりたる砂浜に青海苔の付く岩が顔出す

潮引きて磯の香におう渚道海べに降りて雀啄ばむ

曇りたる空に騒音響かせてヘリコプターが海上を行く

6月12日(月)

松陰の潜(ひそ)みしみ堂何首かの歌の書かれし板を掲げる

松陰の思いぞここに極まれり「賎が誠は神ぞ知るらむ」

観念をしてもの言わぬ自閉児かわが子を施設に送りとどける

偉いとか上手いとかいうことでなくわが歌よあれ己れのままに

6月10日(土)

わが家の鶏鳴けば山里の木霊のごとく遠く応える

乱高下する罫線の山谷を孤独の月が今宵渡らん

田植え終えあめんぼうなど泳ぎいていよよ澄みたる空を映せり

雨上がり水の増えたる瀬の音がわれに迫りてこころを癒す

石投げを時を費やすかっこうの遊びとなして子は倦むこと知らぬ

6月9日(金)

ひまわりも悩み苦しみ悶えるやゴッホ自身を映すごとくに

リューマチに曲れる指よ結(ゆ)わえたる筆に描(か)かれしルノワールの絵

挿話なき日々を送れる寒村に湧き起こりしか子殺し事件

6月8日(木)

真昼間の闇深ければエレベーター昇り降りするその暗闇を

暗闇に人間無視の昇降機(しょうこうき)シンドラーはた村上ファンド

6月7日(水)

のどかなる東北の川流れいて岸辺に少年の遺体見つかる

東北の春の川辺に草生えて稚(いとけな)き子の遺棄死体あり

川の水赤く染まれる夕暮れに少年一人の命絶(た)たれる

こけしという言葉哀しや東北の少年少女次(つぎ)て殺さる

めらめらと原始の力湧いているワシントン椰子の幹の膨(ふ)くらみ

子を殺(あや)め砂漠のこころは彷徨(さまよ)うか川岸に来て水に寄りゆく

6月5日(月)

休日を事務所の机に過ごしたるつつじの蕾花開きおり

幾たびの失敗重ねつばくらめ今年三羽の雛を孵えせり

左臂切断赤心示したる慧可禅師の石像の前

渓深き山里なれば瀬音澄み鶯の声響き木霊す

長雨にジャガイモの葉は枯れにけり明日は掘らんと妻に言いたり

6月3日(土)

山間の無人の駅に佇めば諸鳥の声朝を囀る

晴れという予報のもとに出で来しが厚く曇りて小雨降りくる

川奈駅近づきくれば海臨む広き芝生の丘が続けり

幾百のイルカを殺し血の海と化せしかここは川奈の港

ホームより線路に降りて啄ばめり紅(べに)の二足で歩みいる鳩

らっきょうと生みたて卵ささやかな土産となして子に会わんとす

居場所なき苦るしさ知ると職退(ひ)きし友自宅での毎日を言う

6月2日(金)

木々の枝とぎれしところの紫陽花は日差しを受けてはや見ごろなり

森のなか小暗きなかに諸鳥の鋭(と)き鳴き声は響き渡れり

夕暮れの田の落ち水の音すなり蛙(かわず)の声と和して静けし

田植え終え夜(よ)の更けゆけば延々と蛙(かわず)の声は深まりてゆく

わが部屋の光を求め来しものか硝子窓打つかなぶんひとつ

5月31日(水)

今月も何とかなった生かされたそうだほんとだ生かされたんだ

給料日に支払いするは当然だ当然だけど払えないんだ

すみません内払いでもいいですか助かりました喉飴どうぞ

八月の日付で切っていいですかすみませんちょっと風邪気味なんで

5月30日(火)

城山にあじさい見んと来しわれを迎うるがごと蝉の鳴く声

緑色を帯たるままの紫陽花のかすかに紅(べに)に染まる幾ひら

廃業しはや十年を経(へ)しホテルあじさい園にぬっと現る

城山の傾(なだ)りを埋め群生すあじさいの花いまだ二分咲き

5月29日(月)

庭のある家がありしか雑草のなかに埋もれてアマリリス咲く

城壁のごと石積みて山上に頓挫しているホテル開発

碑(いしぶみ)は空穂の歌が刻(きざ)まれて熟(う)れたる桜の実がこぼれたり

志燃やし松陰漕ぎし海に堤防築かれ釣りびと座る

いつにても出来ることあり目をつむり神に感謝の祈り捧げる

5月28日(日)

眠られぬ夜明けの三時ホトトギス命燃えよと啼く声聞こゆ

眠られぬ夜(よる)は明けたり雨の中キジ、ホトトギス、ウグイスの声

文字ひとつ思い出(い)だせず悶えおる最中(もなか)にアルツハイマーの文字

さわやかな皐月の風はさざ波を起こし早苗の喜び誘う

枇杷の実が熟れくるころに数匹のキリン葉陰にひそむ空想

遠山は雨上るらし尾根這って霧立ち昇り雲ととけゆく

5月26日(金)

松陰がその生涯を賭け漕ぎし柿崎の浜なぎて船なし

ナマコ壁崩るるばかり古りし家ここの小道をお吉通いし

新しき赤き前垂れ赤頭巾六地蔵尊鼻が欠けおり

ずんぐりもスマートもある椰子の木の並木は曇り空を支える

一心に生きると水を吸い上げる一輪挿しに一輪の薔薇

いっときのいのち生かされバラの花一輪挿しのなかに鎮(しず)もる

5月25日(木)

わが丈を超え萱茂る廃屋よ庭にはかって子らの声せし

穏かに波寄せる音 カラス一羽歩みていたり潮干く浜に

あてどなき悩みの果てに野の花を摘み来て机の上を飾れり

なにすると生まれしわれか花ひとつ咲かすも全て神のみこころ

5月24日(水)

なにほどの蜜持つわれか蝶ひとつしばし付き来きて止まらんとする

麦の穂のいたくそよげる花壇あり観賞用に庭に植えてる

花のなき道歩みきて匂えるは白き小花を咲かせる蜜柑 

流れ行く外なき川か岩を打ち石乗り越えて滾(たぎ)ち泡立つ

夕闇の迫れる川にまぎれ来し鯉の一尾のゆらり静けし

松陰のひそみしみ堂は古りたるも新注連縄(あらしめなわ)を戸口に張れり

5月21日(日)

小雨降るペリーロードを廻(もとお)れり黒船祭りの人にもまれて

民謡を踊る広場の輪のなかに外国人の姿も混じる

時満ちて花を掲げる野の百合のごとくにあれなわれの一生

早朝の山間の駅無人にてここにかしこに諸鳥の声

葉桜の並木となれる川岸の河津桜の丈みな低き

トンネルの多き伊豆急眼(まなこ)より間なく暇なく海原消える

山間の地形にありて稲取という名付きおり伊豆のこの地は

薄曇る海原にいまうす陽(び)差し海面(うなも)きららに朝日子の舞う

白田(しらだ)という地名付きしは海に向きデルタのごとく開けたる土地

断崖の下に開けし温泉場見下ろすそこは伊豆の北川(ほっかわ)

クラス会欠席すると友よりの電話は告げる胃の全摘を

幾筋の雪消(け)残りて富士が嶺(ね)は薄雲のうえ黒づみて立つ

5月20日(土)

姦しくヘリコプターが旋回す黒船祭(くろふねさい)の二日目の今日

休耕となりて幾年(いくとせ)雑草のなかに混じれるれんげ草の花

強風を伴い荒れし五月雨に小粒の梅のあまた落ちいる

青萱を揺すりて過ぐる青嵐羽根を閉ざせる蝶止まりいる

真夜荒れし風雨おさまり遠山の薄日のなかに朝の虹立つ

5月19日(金)

目覚めおれと何度もイエスに言われしもペテロそのつど眠りこけたり

目覚めえぬわれも一人かキリストが何度も言いし目覚めておれと

何ほどの取り柄なくとも一心に働く姿とわれよ映れよ

雨水を含み鎮もる砂浜を見ていたりけり小雨に濡れて

5月18日(木)

日米の国旗各戸にはためきて黒船祭りいよいよ明日(あした)

沖合いに米艦船が停泊し黒船祭りの前夜を灯す

黒船の花火会場設営の終わりしころに雨降り始じむ

大雨の予想となれる明日の夜黒船祭の花火上げるに

5月17日(水)

一日の憂いを歌に託さんと静かになればえんぴつを取る

枯れ茎のなかより青萱葉を出せり激しく季(とき)は地球を巡る

ひと時の花を咲かせたハナミズキ季節移りて葉の茂りおり

干潮に浅くなりつつ海草が髪の毛のごと波に揺らめく

潮風が運びくれたる磯の香(か)を嗅ぎつつ海辺の道を歩めり

断崖の岩に根を張る松の木は海辺に向きて枝を伸ばせり

紫陽花の季(き)に間のあればたくさんの小粒の花は青み帯びおり

松の木の林に入ればまっすぐもよじれるもあり寂しみて見る

遠くよりイルカのショーのアナウンス呼笛拍手や歓声聞こゆ

ショーをせず生簀(いけす)に泳ぐイルカいてわが独りいる前でジャンプす

5月16日(火)

入選の通知が来たという友と共に喜ぶわれには来ぬが

何故かくも拙き歌を送りしや選終えしあと悔やみていたり

現在は未来から来て過去となるそんな話を聞いた気がする

生きているただそれだけでとりあえずよしと思えば笑い湧き来る

5月15日(月)

妻のごと40余年付き合いしアルコールとの熟年離婚

晩酌を止めて二ヶ月夕食を早めに済まし独り籠もれり

何故だろう酒飲む気持ちなくなりぬ飲めばいいのに陽気になるに

罪びとの思い俄かに湧き起こりわれは思わず神に祈りぬ

さみしき時モーツアルトを聞くと言いし君の便りが途絶え一年

ツーカーの通じる仲と思いしがあれそれそのと言いて通じぬ

5月14日(日)

咳込みし子の声いつしか鎮まれば蛙の声が四方に響く

代掻きをしたる田なかに四羽の鴨思い思いに水面(みなも)を突(つつ)く

障害の子を歌にする我がことを罪びとと見るわれが同居す

口ごもり言い得ずにいるはっきりと短歌作ると言えばいいのに

「タンカつて何ですか」「たいしたことないですよ」と言う笑顔作りて

5月13日(土)

待望の診療所出来バス停と横断歩道が共に付きたり

神の住む心求めし鑑三か貧苦病苦を厭(いと)うことなく

肉体の重荷は骨を砕くともイエス信ずる心かろやか

5月12日(金)

どこよりかアメリカジャスミンただよいて黒船祭り本番となる

わが机上(きじょう)柄のこわれたるマグカップ置きてジャーマンアイリス活ける

地下室に吹き入る風に事務室のジャーマンアイリス花びら揺らす

伊東沖地下のマグマの活動に予約キャンセル早速入る

代謝なく机の上に置かれたり死体のごとき数数の本

5月11日(木)

苦しかる今ぞイエスを信ずるは闇に苗打つ雨の音する

午前二時目覚め早きにしばらくはボリューム絞りCDを聞く

透析の妻を送りて休日を雨の城山独り廻(もとお)る

すがるべきものを持たざる藤つるの虚空に伸びて揺れ定まらず

あてもなく雨のなか来し公園の藤終わりいてカラス鳴く声

散り敷ける藤の花屑雨に濡れ坂道登る足を掬えり

藤すでに終れる園にかろうじてつつじが咲けり半ば萎れて

雨の降る城山に立ち花終る傾(なだ)りを海へ見下ろしている

公園に乙女の裸像立ちていて頭上に止まる烏動かず

松喰虫防護の管を身に添えて幹捩るがに太き松の木

秀吉に滅ぼされしと記(しる)される立て札を雨しきりに打てり

清掃車遠くチャイムを鳴らせるを雨降りしきる城山に聞く

城山の人なきに立ち見下ろせば雨の港にカモメ飛び鳴く

透きとおるカッパを着たる少年の一団と会う坂下り来て

5月10日(水)

給料の遅配二ヶ月事務室に妻の作りし弁当を食(は)む

倒産も視野に入れたる資金繰り心の揺れは決して出せない

生きている 曇れる空のもとにして薄日が差せば涙出(い)でくる

生きている この黄に咲くは何という花か薄日が差せば開けり

5月9日(火)

血みどろの生より脱皮せしごとく死体は静かに横たわりいる

罪びとは私(わたくし)なしとマスコミに過去を余さず暴かれている

透析を共にしておる最中に身罷りたりと帰り来て言う

5月8日(月)

いつまでも自己に執するわれなるか泥巻き込みて波の寄せ来る

ゴールデンウイーク過ぎたる公園の花ら普段の顔に戻るや

滔滔と臨死体験語りしに友は再び倒れ返らず

5月7日(日)

のどやかに来鳴く鶯この春も姿見ることなく逝かんとす

鶏(とり)小屋の前にこぼるる穀物を余慶のごとくスズメ啄ばむ

九十の媼の守る薬局は郵便ポストを残し閉ざさる

幾十羽ハト群れていて一斉に飛び立ちにけりわが足音に

幼稚園扉閉ざされ中庭に忘れられたる風ぐるま立つ

幾千の雨粒作る川の面(も)の波紋変わらず流れ止まざり

なにとなく書店に心慰めるわれのごとくかスーパーに妻は

連休の終る舗装路朝(あした)より雨が静かに濡らしておりぬ

5月6日(土)

ネコかとも思う小物(こもの)が鶏(とり)襲い眼(まなこ)光らせ闇に去りたり

罪びとという思いわく魚(うお)家畜野菜もすべて生を持つもの

自らを変えずに何の変革ぞ今日から酒を飲まぬと誓う

廃業のホテルの庭に草茂り春惜しむかに花々が咲く

つばくらめわが家に再び戻りしも蛇のことなどこころ騒げり

フクロウは福来るという玄関にあまたを並べ迎えくれたり

小手毬の固まり咲ける庭隅に東京の子を思い佇む

一夜にて水田生(あ)れしごとくにも機械化進む過疎の村にも

休日の公民館の前行けばフラダンスする老いびとの声

ゴールデンウイーク終わり静かなる舗道にツバメ旋回をする

紫の色のにおえる桐の花枝みな天を向きて咲きおり

百日紅(さるせべり)白きはだえに新芽萌えなべては夏に雪崩るるごとく

雑草に黄の花が咲き黄の蝶をひとつ遊ばせ春逝かんとす

舗装路にあまた落ちてるさくらの実踏みしだかるる見る人のなく

廃屋(はいおく)の庭にまばらに芥子の花その繊細の花びら揺るる

お茶の木を垣根のごとく廻(めぐ)らせる家あり初夏の光あまねし

5月5日(金)

地下室といえどつつじは花瓶にてその紅(くれない)の花開きたり

山なれば諸鳥の声姦しく松の枝(え)強く風揺すりおり

早咲きのつつじは早も色褪せて枯れたる花べん葉にまつわれり

黒船に似せ造りたる遊覧船波荒きなか湾を巡れる

松陰の心燃やせし柿崎は浜風強く波飛沫(なみしぶき)舞う

風強き渚に立てば波砕け初夏(しょか)の日差しを巻き込みてゆく

風強き渚歩めば砂飛礫(つぶて)顔に当たりて目つぶしとなる

潮風の強く吹きしく渚道椰子ゆらめきて葉音やかまし

弟に家業譲りて離れ住む母のことなど今宵は思う

5月4日(木)

まばらなるバラ園の花白色のツツジ盛りて入口飾る

風強き渚に立てば苛立てるごとくに波の打ち寄するなり

悲鳴あげ遊びほうける子供たちかく無邪気なるころがありたり

5月3日(水)

眠りなと何度も言われそのつどにうんうんと言い子は眠らざる

山間の寂しき里にサギ一羽最後の刻(とき)のごとく羽ばたく

喬木にその身を添いて山藤が感謝のごとき花房垂るる

身の廻(めぐ)り身奇麗にする見返りに環境汚染をしてゆくわれら

環境の破壊止めざる人類の少年に初夏の朝陽きらめく

4月30日(日)

喬木にその蔓伸ばし山藤は紫の花咲かせ垂れおり

ベランダの物干し竿に鯉のぼりくくられているビルの一角

この風は昨日と違う今日の風笑ってみよう大きな声で

生かされているんだきっとコンクリの割れ目に生える草もわたしも

曇りたる空に薄日の差すごとく鶯の声あたりに響く

4月28日(金)

益のないことに力を費やすや歌はわたしのいのちなどと言い

ゆっくりと湯舟に浸かり聞いている水滴ぽとんぽとん落ちるを

生きるためわれの犯せし罪あまたお赦しあるやイエスキリスト

4月27日(木)

問題はこれからなんだ過去なんか振り返ってる余裕はないぞ

どうするやパチンコなどに狂いいてこのまま君は生きてゆくのか

色々な選択生き方人生がありて決めるはあくまでも君

眠れない今こそ両手握り締め神に祈らん力限りに

ごんごんと頭の中に血がのぼり午前一時を眠られずいる

4月26日(水)

薄紅の花を咲かせてハナミズキ黒船祭の街を飾れる

舗装せぬ道雑草が生い茂り花に黄の蝶ひとつ止まれり

穏やかな日差しを浴びる鯉のぼり風待ち顔に幼子見上ぐ

鯉のぼり尾を振り泳ぐ真下には今を盛りと藤の花咲く

犠牲こそ幸福なりと知るごとく花瓶の花が輝いている

4月25日(火)

過去は過去歴史は歴史われは今これからどうする今からどうする

信ずとは如何なることや芝桜いま季(とき)を得て一面に咲く

4月22日(土)

本読むに不便と言いて目の手術せし歌の友九十五歳

川端の小薮のなかに鶯の鳴く声聞こゆ瀬音とともに

くれないの色ほのかなるハナミズキ黒船祭のま近かとなりぬ

花冷えの山の谷間に鳴り響く鶯の声諸鳥の声

用水路に水が引かれて春は早や田植えに向けて動き始めり

4月20日(木)

細首の花瓶に挿せる八重桜空調設備の風に吹かれる

細首の花瓶に挿せる八重桜ひとひらが散るわれの机に

伝票に書かれる数字実感を伴ないてくる夕方の〆

新緑の山に真向かいなにとなく生きる力をいただいている

さわやかな風吹くなかにかうかうと哀しき声でカモメ鳴き舞う

4月17日(月)

一時(いっとき)を一輪ざしに永らえて花咲かせたり八重の桜が

机にて細首花瓶の一枝の八重桜がいま開きたり

子どもへの信頼これは結局は自分自身にむけられること

結局は全てを捨ててゆくんだよいまは実感しないけれども

4月16日(日)

二十年地下の事務所に勤めいて窓の光をまぶしんでいる

金繰りの仕事というはしんどいが地下事務室で頑張っている

信じよう信じられぬを信じよう信じて生きて信じて死なん

4月15日(土)

切岸に咲く藪椿くれないの花散らしたり岩打つ波に

幽霊はいるかいないか分らない分らぬことはほっといておけ

人に会う恐怖はまるで幽霊を実像として怖れるごとし

本当は悲しいのかもただ一人寅さん映画見て笑ってる

4月10日(月)

環境の破壊止(や)めえぬ人類のわれも一人か焼酎を飲む

滝音は山を鎮めて満開の桜の花を静かに散らす

4月5日(水)

生きるため環境破壊くり返す人類われらも自然の一部

蔕あまた残れる枝にようやくに希望のような若葉萌え出る

4月4日(火)

いい人であること自体エゴなんだ言ってくれるね極道の君が

一輪の椿の花を挿しただけ地下事務室が華やぎている

わたくしが間違っているわが内のエゴを抑えることなど出来ぬ

墓石の連立してる墓地に立つわれにさくらの花が散りくる

地獄だと言ってる言える君はまだほんとの地獄知らぬ気がする

生きていてうれしいたのしい特別のことなどいらぬ生きて行くのに

4月2日(日)

雨止みて靄のかかれる裏山に笑うがごとく山桜咲く

生きるとは命を奪うことならんいま諸々のいのち尊し

4月1日(土)

人間は一人で生きてゆけぬゆえ自分自身の責任つくす

東京の子よりの電話快活に仕事の辛さ厳しさを言う

わが知らぬ世界に生きる子の仕事辛いと言えど手助けならず

子や妻を変えることなど難(かた)ければせめても変えんおのれ自身を

信用でなく信頼ぞこれをもてわれはこれから生きゆかんとす

さあ何がわが人生に待っている何者も来よ何事も来よ

3月29日(水)

早咲きは葉桜となり川岸に染井吉野が開き初めたり

早咲きの桜は終わりま白なる染井吉野が咲きはじめたり

ま白なる染井吉野の根方にて垣の椿が紅(くれない)に照る

夜(よ)は夜警朝より清掃くたくたとなり眠るなり昼の三時を

3月28日(火)

雨粒が激しく屋根を叩きつつ春の嵐の音唸りたり

焼酎のお湯割り少し濃かったと自ら入れて独りごと言う

子はわれの道具ではないわれも子の道具ではないさあさあ生きろ

コロンボの別れの仕草(しぐさ)ドア際(きわ)で最も大事な一言をいう

3月27日(月)

部屋隅に飾られているドライフラワー幾年経しや埃積もりて

正常と異常に分けるシステムが今の社会を動かしている

3月26日(日)

波音の荒き岩間に流木が真白き肌をさらし横たう

松の木が海に向かいて枝伸ばす根を断崖の岩に張りつつ

いつしかに桜並木を見上げずに金繰りのこと思いているか

広場では中学生の吹奏楽水戸黄門の主題歌となる

3月25日(土)

生きるため努力してるやアメーバー 自己保存する本能を持ち

人間は生まれながらの未熟児で泣くしかないし依存しかない

春なれば自ずからなる力満ちわれの内から青き芽がふく

依存する障害の子がいるゆえにわれらの夫婦絆強まる

先のこと過ぎ去りしこと皆捨てて今日に生きてる日雇いのごと

3月23日(木)

感情はこころの動き自己保存種族保存をするためのもの

内的な葛藤はない感情は単なる道具脳の働き

生命はアニマ(精気)ではなくメカニズム自己の保存と種族の保存

感情は手段使用のメカニズム人を動かす単なる道具

3月22日(水)

「好き」という言葉こころでこだますることばことだまこの暗示力

マスコミは大きな暗示われわれはマインドコントロールされてる

結局は人間関係 親も子もともに自立をするべきなんだ

3月21日(火)

父よりの心得の文(ふみ)左手に主税十六歳の切腹

潔く身を処すことをなさずして何しておるや永田寿康

支払いの遅れ咎めず助けてと干物屋の主人頭下げたり

込み合える電車の中でつり革を友と二人で引き合っている

地下室のわが事務室に飾られるドライフラワー蕾も混じる


3月20日(月)

園児らの八千余個の風車広場を埋めいっせいに鳴る

金繰(かなぐ)りはわれの仕事のあらかたで会社はわれのものにはあらず

金繰りに苦しむ日々やいいかげん人のことにて苦しむはよせ

風車作り飾れる園児たち「風まつり」とうイベントのため

幾千の風車たち公園の花壇のなかに花なく立てり

3月19日(日)

三月の三島の駅に降り立てる渡辺さんは九十五歳

選評でわがけなせしも互選にて高得点になりしこの歌

自信あるわが選評と思いしも他の選者とは異なりており

短歌とは怒り瞬間湯沸と言わんと思い言ってしまった

3月18日(土)

犬ふぐりたんぽぽ咲いて蝶が飛ぶ日差しあふれる今朝のひととき

桃が咲き木蓮が咲き桜さきわが家の庭が賑やかになる

原因を過去に帰するは易(やす)けれど過ぎ去りしものいかに直すや

枝枝に黄の花いっぱい咲かしたるミモザアカシヤ重おも揺るる

能力が劣りひ弱な人類は生きているんだ力合わせて

独りでは生きてゆけないわれだけどひとりでいるとこころ休まる

3月16日(木)

せいせいと背丈を伸ばす藪椿その頂にあまたの花見ゆ

城山の諸鳥の声静まれば清掃車のチャイム遠く聞こえる

あまたなる椿の林行きゆきて波音遥かな絶壁となる

見晴かす海原はるか波音のかすかに聞こえ白く砕ける

伏せるもの仰向けのものあまたなる花敷きつめる椿の巨木

消火器を入口に置く城山の椿の林いまや満開

千余年経し椎の木の枝伸びて抱(いだ)かれるごと忠魂碑あり

3月15日(水)

プランターの菜の花あまた開きおり破綻となりし銀行の前に

園児らの作りくれたる風車(かざぐるま)広場をうずめいっせいに鳴る

並びたる幾数千の風車回れるなかに遅速ありたり

公園の外灯のもと風車回りていたり風強ければ

3月14日(火)

空調のなき事務室の暗がりの壷に椿の蕾が開く

一輪の椿の蕾地下室の事務所の壷にいま開きおり

六弁の紅の椿は事務室の机に開きわれを待ちしか

庭先に植えし椿のあらかたを道路拡張工事で失う

3月13日(月)

居場所なく追いつめられし少年か十四歳で自宅燃やすは

簡単に離婚するなよ引き裂かれ行くぞ子どもの弱きこころが

くれないの小鳥飛び立つさまにして木蓮の花開き初(そ)めたり

一粒も無駄にするなという教えわれ長きこと忘れていたり

3月11日(土)

菜の花に光が注ぎ眼前に紋白蝶が戯れている

温かき春の日差しのなかにいてわが影は手を振りて歩けり

木蓮のつぼみの先に紅(くれない)の見え始めたり三ヶ月経る

3月10日(金)

技術よりこころが先か最近は分らなくなるこころとは何

分らないことをあれこれ論じるは止めよう分ることからしよう

種は技(わざ)風姿花伝の口伝にもあるではないか技術が先か

技術なら磨けるだろうなかなかに心磨くは難しけれど

分らないものはそのまま捨て置こうこころ無意識あの世のことは

3月7日(火)

緊張を生きゆくための最高の手段となしてわれは生きしか

幾たびも勇気くじかれ生きてきたわれをそろそろ褒めてやらねば

過去を悔い未来を憂う身に注ぐ透き通りたる焼酎の味

終わりなき作歌の道に踏み迷うわれに終わりは歴然とあり

昨日より今日はよくなり明日(あした)にはもっとよくなる終わりなき道

よくなれと思えばすぐによくなると思わねどなおよくなれと思う

3月5日(日)

トンネルを通過した目に飛び込んだいま満開の菜の花畑

ゆとりある教育はいいゆとりある人間作る教育はいい

両岸に河津桜は咲きそろい紅(くれない)の色に川を染めおり

早咲きの桜のもとに笛太鼓たたき囃すは町の若衆

3月4日(土)

感情に左右されずに科学的論理的なる考えしたし

沈丁花白い小花が咲き出して春の匂いが庭に広がる

懺悔するごとく花びら散らし立つ山茶花紅の涙ながして

2月26日(日)

雪となる予報外れて伊豆の地は早咲き桜が満開となる

早咲きの桜を見んと思いしに朝から雨が降りて止まない

簡単に確定申告出来る世となりたりインターネットを使い

人類の生き方がいま問われてる地球規模また宇宙規模での

2月25日(土)

見えること見られることを好むという米国人の性質として

習慣という代物(しろもの)が内に棲み君を操っていると言うのか

習慣という代物を探そうと解剖しても何処にもあらず

2月24日(金)

事務室の花瓶にさしたる紅椿かたき蕾が今朝開きたり

白梅の蕾椿のつぼみ今花瓶の中に花開きたり

一枝の梅のつぼみが確実に花ひらきおり一輪挿しに

事務室の机に置かれた花瓶から一夜明けたる椿開きぬ

2月22日(水)

満開の紅梅の花とげとげとごつごつとしたる幹や枝先

曇りたる空の隙間を縫うように陽が差してくる温かい陽が

休耕の畑(はた)一面菜の花が大地の力みなぎらせてる

菜の花が畑いっぱい咲いている雲間に朝の陽が差してくる

出世せん金儲けせんそんなこと考えないで紅梅が咲く

2月21日(火)

予算案審議しないで探偵のまねごとか永田寿康(ひさやす)未来を見よう

良いことを思えば良いことやってくるこの理(ことわり)よこの言霊(ことだま)よ

紅梅の咲きたる庭に黙々と木蓮の枝莟はぐくむ

この宇宙いかなるものか分らぬがその法則にわれは則(のっと)る

2月18日(土)

こんな道あんな道またいろいろな道が未来に存在をする

君の道ひとつではないただ君が歩かなければ先に行けない

感情といえど結局わたくしの一部に過ぎぬ主人はわたくし

感情にまた習慣にあやつられ生活するや奴隷のように

2月15日(水)

紅梅が怒ったように咲きました一ヶ月半我慢していて

何故死んだ何故死んだんだと嘆けども亡き子は再び返ることなし

分ること分ることして生きゆかん分らぬことはそのままにして

2月12日(日)

帰宅せしわれの着替えを待ちきれず外に飛び出す自閉児わが子は

待つように外に出た子に呼びかけて気持せきつつ着替えを急ぐ

着替え終え外に出たれば子の姿どこにもあらず呼べど答えぬ

石投げの好きな子なればあるいはと姿を求め河原を走る

河原にはおらねばわが子はいずこかと車激しき車道を走る

燈台下暗しとはこのことかわれを待ちおり隣人とわが子


2月11日(土)

寒さ耐え遅い開花の紅梅がここに一輪そこにいちりん

赤い殻破りて一輪一輪と白梅遅い春を咲きつぐ

爛れたる恋も無く過ぎ霜月の未だ紅蓮(ぐれん)の鶏頭の花

少しずつ遅れ出したる腕時計時刻気にせぬ歳はまだ先

こんなことこのまましていていいのかと谺する声心に響く

2月8日(水)

資格なく誇る仕事もなきわれはぼちぼち生きるただの人間

六十代マイペースにて生きゆかんお先にどうぞわれは一服

落ちるとこ落ちてしまえば磐石(ばんじゃくな)地面があって安定をする

この今を精一杯に生きないでどこで生きると君は言うのか

またその手病気理由に問題を回避するのはもう止めたまえ

結局は勇気なければ生きられぬ生物界の掟守らん

2月6日(月)

責任をもって自分でやってくれ親より長く子は生きるから

結局は自分でやるしかないんだよいつまですねて親を頼るか

遊ぶなら遊べばいいさきっちりと自分で責任取るならいいさ

発見でなくて発明歌だって写生の上に創造がある

誰のためためになるとかならぬとかそんなことより好きならやりな

2月5日(日)

われに湧け鰯(いわし)の頭拝みたる古(いにしえ)びとのいちずないのち

ああ雪と飛び出しざまに転倒すアイスバーンとなりたる庭に

伊豆の雪めずらしければ舞い降りてカラスもしばし歩いていたり

日の当たるこちら側より山陰(やまかげ)の雪積む白き家々を見る

売れや売れ品物あまた溢(あふ)れさせ浮かれ狂うか日本の社会

2月4日(土)

妻が言いわれもまたいう障害のわが子に浴びせるだめだめコール

ふわふわと降りゆく雪に清められわれのこころが真白になる

正月に昨年咲いた紅梅が二月になってもいまだに蕾

2月3日(金)

青空のもと風強く吹きわたりぐわんぐわんと山が動けり

人間の環境汚染を咎めんと異常気象が地球を襲う

感情は子供の使いわが内で腕白坊主がまた怒りだす

ゆっくりと湯舟に浸かり聞いている水滴ぽとんぽとんと落ちる

2月2日(木)

今ここに過去はもうない悔いもない未来まだ来ず不安もあらず

ただ今を鷲づかみにして生きようよ後悔不安今になければ

ただ今を見つめて生きん後悔も不安も捨ててただこの今を

真白なただ今がいま過ぎてゆくまた真白なただ今が来て

考えて寿命伸びるや後悔や心配をして寿命伸びるや

いまここに何が見えるか 過去の日や未来ではなく いまこの時に

2月1日(水)

キリストは悟りの前に荒野にてサタンに会って誘惑された

サタンこそ悟りの前にやってくる最後の試練喜びたまえ

習慣を変えるときには起こるんだ儀式のような禁断症状

誰だってやる気を持ってるそのやる気眠らせたまま死んでゆくのか

深刻でなく真剣にゲームでもする余裕もて生きてみないか

1月31日(火)

何を見て生き行くわれか1月は今日で終わって明日から2月

一日が何も起こらず過ぎゆくを奇跡のごとく思うこのごろ

1月26日(木)

打(ぶ)ち噛(か)まし一直線に進むだけ松登のこと今も忘れぬ

情報の量の多さに結局は何も無きかのごときこの頃

堤防にあまた集えるカモメたち夕日に向かい何祈るらん

霜柱踏めばきしきし音がするまだまだこれから生きねばならぬ

1月23日(月)

霜置ける朝の芝生にさんさんと光がそそぐ今日の始まり

なにもかも急ぎすぎてはいないのか死に急いではいないのか

急行が止まらぬ駅に暮してるぼちぼち行こう鈍行電車で

山の端の夕日を浴びて新しく今生まれたる波が寄せくる

1月22日(日)

雲と雲重なりあえる隙間より現れ差せる朝の太陽

道端の水たまりにもはっきりと映り輝く雲間の光

早過ぎる時の移りを正すごと雨に濡れたる忠魂碑立つ

ボリュームを絞りテレビを見ているか子の笑い声隣室にする

温暖化二酸化炭素の問題がヒューザーライブドアに消される

1月18日(水)

ユズさんも風呂に入ると言い聞かせ湯舟のなかに息子を入れる

限りなきまで広がれる青い空わたしのこころをいっぱいにする

自販機の缶コーヒーをかじかめる手に包み持つ祈るかたちに

微笑める君の面輪にほの見えし哀しきさまが思い出される

1月17日(火)

暗ければ明るくすればいいだろうそれだけのことこれからしよう

過ぎたことその原因を探しても探し出してもそれでどうなる

前を見よ前に進んで振り向くな後ろを見たら石になるから

過去は石過去は化石のようなものいまさらそれがどうなるんだい

1月16日(月)

生きている証(あかし)となしてわが歌は浮かんでくるや生まれてくるや

九十四の歌友の葬儀九十五の渡辺さんを乗せて出かける

九十四を一世となししなかさんは七十にして作歌始めし

1月14日(土)

神様を信ずることはわたくしのまったく個人の問題でした

神様を必要とするわたくしに現れこころを支えてくれる

神様はいると信じて一生を生きていきたい個人的には

神ありと信じて生きるまったくの個人的なる信仰として

神様はいるかいないか分らぬがいると信じるわたしのこころ

1月13日(金)

これからはマイペースにて生きゆかんお先にどうぞわれは一服

あれこれと分析しすぎ結局はなにがなんだか分からなくなる

わたくしは体も心もばらばらでなくて全てがわたしなんです

1月も半ばとなりてなんとなく惰性のようなものが付きくる

容(い)れられぬわが感情の捌(は)け口を妻子に向けしこともありしか

1月10日(火)

わが内にキリストあらば地獄とも磔(はりつけ)なりとも恐れるべきや

戸を開けて朝の光を差し入れよさあ今日の日が新しくなる

十字架の上で死ぬとも神とあるこの安らぎを選びしならん

わが内はむさ苦しくはあるなれどお住みくださいこころゆくまで

われが今生きるにあらず内におるキリスト様が生きているのだ

1月9日(月)

猟犬に追われ逃げたる鶏を藪草むらを探すもおらぬ

猟犬に追われ逃げたる鶏が庭で鳴きおり一夜経し朝

今年もか片目のままで納めたりだるまを思う炎の中の

今流の自由のよさを示したり野洲高校の伸びのびサッカー

奥さんが亡くなってから鉄骨が露となったビニールハウス

関わりを改善するは家庭から妻から子からまず始めよう


1月8日(日)

わが庭に迷い込んだる猟犬が鶏(にわとり)一羽に襲いかかれり

猟犬に襲われあまたの羽残し鶏一羽姿を隠す

雪残る庭にあまたの羽残し鶏一羽夕べ戻らず

夜は更けて冷気ただよう部屋にいて今宵戻らぬ鶏思う

猟犬を放してわが家の鶏を襲わせたるや都会より来て

日に一個きちんと卵生みくれし鶏逃げて今宵戻らず

1月6日(金)

陽光に輝き伊豆は銀世界 雪にこころも真っ白になる

フロイドやユングのことは聞いていた「アドラー心理学」初(はつ)に耳にす

副題に「よりよい人間関係」と書かるる『アドラー心理学入門』

新しき世界が開かれゆくような予感受けたり「アドラー心理学」

1月5日(木)

何もかも変わりなけれど暗闇になりたるとたん恐れ湧きくる

見栄っ張り未成熟なるちっぽけな幼き吾に依存するわれ

神様に依存するのを恐れるはいまだ幼いほんとうのわれ

若き日に買いていまだに読まずおり『心優しき叛逆者たち』

1月3日(火)

暗闇に隠れおののくわが内の小さなものに光を当てん

正月の三日も明けて朝焼けのもとに静まる里の山々

葉を落とし白き肌(はだえ)を晒し立つ光のなかの銀杏まぶしき

正月の三日の空は晴れわたり竹林に陽(ひ)が輝き揺れる

1月2日(月)

夜(よ)を好むものにはあらず暗闇に光を当てて生業(なりわい)とする

正月の二日の夜明け告げて鳴く鶏(にわとり)の声光をまとう

装いてカラスも鳴くや正月の二日の峡に響くその声

この里に千年余り生きてきた椎の巨木に朝の日が差す

川の水少なくなりて元旦のうす曇りたる空を映せり