路線図・時刻表に見る相模線の変遷をご紹介します。
目次
1・路線図に見る相模線の変遷
2・時刻表に見る相模線
3・停車場改廃一覧表
(1)は大正15年発行の日本鉄道全図から抜粋したもの、貨物側線である川寒川支線の表記は無いが貴重な初期の姿である。
(2)は汽車時間表昭和5年10月号(復刻版)から抜粋、茅ヶ崎〜厚木間の営業時の姿。厚木駅を横切っているのが昭和2年に開業した小田原急行鉄道、その下を右手から合流してきているのが神中鉄道である。
また画像左端にある「台町」駅は二宮〜秦野間を走っていた湘南軌道(昭和11年廃止)の駅である。
(3)は昭和15年発行の新正鉄道旅行図から抜粋、昭和10年に本上溝に改称した「相模横山」や13年に陸士前に改称した「座間新戸」が未だ修正されていないなど誤記が多い。右上方から左下方に縦断している小田原急行鉄道とは接続していないのがよく解る。
(厚木から右下に分岐している「中新田」は神中鉄道の「厚木中新田口」であり、相模鉄道の「中新田」停留所とは異なる)
(4)は時間表の昭和15年10月号(復刻版)から抜粋、僅か2年間の駅名だった「陸士前」の名前が見える(「相武台下」にはこの年に改称)。この時点で支線上の「昭和産業」への旅客列車が運行されていたが路線図への掲載はない。(時刻表は載っている)
(5)は時間表の昭和17年1月号から抜粋、支線上の「昭和産業」が路線図に掲載されている。昭和16年に神中鉄道が旅客列車の厚木乗り入れを止め、海老名から小田急の「相模厚木」(現、本厚木)へ直通を開始したため、路線図上では相模厚木に直結している。
(6)は時間表の昭和19年12月号(復刻版)から抜粋、相模線買収直後の姿で駅名の大部分が変わっている。省線となったため駅の省略も無くなり路線図も太線に変わった。
(7)は昭和26年発行の最新全国鉄道地図から抜粋、西寒川支線の姿がないがこれは昭和21年頃から旅客列車の運行が無くなっていたためであろう(書類上は昭和29年まで旅客線扱いであったが、現実には旅客列車は運転されていなかった)
(8)は昭和57年発行の最新鉄道路線図から抜粋、西寒川支線はこの2年後に廃止される。
神奈川鉄道写真集に掲載されている、昭和17年12月の相模鉄道時刻表。
相模鉄道としては最も遅く開業し、僅か2年半しか営業しなかった香川台停留所(円蔵〜香川間)の名前が見られる貴重なもの。
・番外編
時間表昭和17年1月号に掲載されていた相模鉄道の広告。「茅ヶ崎八王子間近道」というのが当時の実状を反映しているようで面白い。
・表の見方 「開業日」………… 駅が開業した年月日(茅ヶ崎および橋本は相模鉄道としての開業日) 「開業時の駅名」… 開業した当初の駅名。【】内は読み 「改廃」 ………… 駅名改称・昇格・休止・廃止等の記事 「現在の駅名」…… 現在の駅名、「−−−」は廃止を示しています 「備考」 ………… その他の記事。「※註」とある場合は表下部に説明があります。 ・記号の見方 (停) … 停留所 (信) … 信号場 (貨) … 貨物駅 (乗) … 乗降場(正式駅ではなく、構内の乗降施設を指す) (本) … 駅本屋(駅設備のみで乗降場は持たない)
開業日 | 開業時の駅名 | 改廃 | 現在の駅名 | 備考 |
---|---|---|---|---|
T10.9.28 | 茅ヶ崎【ちがさき】 | 茅ヶ崎 | 駅の開設日はM31.6.15 (鉄道作業局により開設) | |
S15.2.1 | 日東【にっとう】 | S19.6.1 改称 →北茅ヶ崎【きたちがさき】 | 北茅ヶ崎 | 従業員専用駅としてS13年開業とも |
S7.6.1 | (停)円蔵【えんぞう】 | S18.10.1 休止 S19.6.1 廃止 | −−− | S15年移転の記録有り |
S16.3.3 | (停)香川台【かがわだい】 | S18.10.1 休止 S19.6.1廃止 | −−− | ※註1 |
T10.9.28 | 香川【かがわ】 | 香川 | ||
T10.9.28 | 寒川【さむかわ】 | 寒川 | ||
S6.7.1 | (停)宮山【みややま】 | S19.6.1 昇格 停留所→停車場 | 宮山 | |
T15.4.1 | 倉見【くらみ】 | 倉見 | ||
S6.7.1 | (停)門沢橋【かどさわばし】 | S19.6.1 昇格 停留所→停車場 | 門沢橋 | |
T15.7.15 | 社家【しゃけ】 | 社家 | ||
S21.4.25 | (信)山王原【さんのうばら】 | S24.3.2 廃止 | −−− | |
S7.11.1 | (停)中新田【なかしんでん】 | S18.10.1 休止 S19.6.1 廃止 | −−− | |
S19.6.1 | (乗)厚木【あつぎ】 | (乗)厚木 | ※註2 | |
T15.7.15 | 厚木【あつぎ】 | S19.6.1 乗降場を(乗)厚木に移設 | (本)厚木 | ※註2 |
S62.3.21 | 海老名【えびな】 | 海老名 | ||
S6.4.29 | (停)上今泉【かみいまいずみ】 | S18.10.1 休止 S19.6.1 廃止 | −−− | |
S10.6.23 | (貨)入谷【いりや】 | S−−.−−.−− 昇格 貨物駅→停車場 | 入谷 | S12〜19の間で停車場昇格? |
S6.7.1 | (停)本座間【ほんざま】 | S19.6.1 廃止 | −−− | |
S6.4.29 | 座間新戸【ざましんど】 | S13.9.29 改称 →陸士前【りくしまえ】 S15.−−.−− 改称 →相武台下【そうぶだいした】 | 相武台下 | ※註3 |
S7.6.1 | (停)上磯部【かみいそべ】 | S18.10.1 休止 S19.6.1廃止 | −−− | |
S6.4.29 | 下溝【しもみぞ】 | 下溝 | ||
S6.4.29 | 原当麻【はらたいま】 | 原当麻 | ||
S6.4.29 | 上溝【かみみぞ】 | S19.6.1 改称 →番田【ばんだ】 | 番田 | |
S6.4.29 | 相模横山【さがみよこやま】 | S10.11.7 改称 →本上溝【ほんかみみぞ】 S19.6.1 改称 →上溝【かみみぞ】 | 上溝 | |
S6.4.29 | (停)作ノ口【さくのくち】 | S18.10.1 休止 S19.6.1 廃止 | −−− | |
S7.11.1 | (停)大河原【おおかわら】 | S15.−−.−− 改称 →(停)相模町【さがみまち】 S16.4.1 昇格 停留所→停車場 S19.6.1 改称 →南橋本【みなみはしもと】 | 南橋本 | |
S6.4.29 | 橋本【はしもと】 | 橋本 | 駅の開設日はM41.9.23 (横浜鉄道により開設) |
・支線
開業日 | 開業時の駅名 | 改廃 | 現在の駅名 | 備考 |
---|---|---|---|---|
T10.9.28 | (貨)川寒川【かわさむかわ】 | S6.11.1 廃止 | −−− | |
T12.2.5 | (貨)東河原【ひがしかわら】 | S14.10.1 改称 →(貨)昭和産業【しょうわさんぎょう】 S15.4.20 昇格 貨物駅→停車場 S17.10.30 改称 →四之宮口【しのみやぐち】 S19.6.1 改称 →西寒川【にしさむかわ】 S59.4.1 廃止 | −−− | |
T11.5.10 | (貨)四之宮【しのみや】 | S19.6.1 廃止 | −−− |
※註1…
「JR相模線物語」「相鉄線物語」では香川〜寒川間となっているが、相模鉄道発行昭和17年12月の時刻表と「停車場変遷大辞典」では円蔵〜香川間となっているので「円蔵〜香川間」が正当。
※註2…
開業以来厚木駅は移設されて居らず、昭和19年に乗降場のみ移設され東急河原口(現、小田急厚木)駅と連絡し現在に至っている。(「小田急よもやま話」にも「相模線が国鉄に買収されたとき、同線厚木駅は旅客施設を移し小田急と連絡、今度は小田急が河原口駅を「厚木」と改称するはめになった。」との記述がある)
またここでは乗降場・駅本屋を別々に扱っているが、あくまで厚木駅同一構内の「乗降場」と「駅本屋」であり「駅」としては1つである。
「JR相模線物語」では「昭和18年月に現在位置に移転し河原口に改称。」とあるが、改称の記録は無く前述の通り「駅の移転」も行われていない。
また、「(開業時の)位置は現駅(厚木駅乗降場)より200m程橋本よりのJR東日本営業所のある所だった」とあるが、その位置が正に「厚木駅本屋」であり営業キロもここが基準となっている。
※註3…
「JR相模線物語」では「駅名も「陸軍士官学校前」となったが、国有化の際現駅名となった」とあるが、「時間表昭和15年10月号」と「停車場変遷大辞典」では「陸士前」となっているのでこちらが正当。
また「相武台下」への改称も「時間表昭和17年1月号」及び「11月号」では既に「相武台下」、「停車場変遷大辞典」でも昭和15年改称となっているのでこちらが正当。
(昭和15年頃から軍部の意向により「機密漏洩防止のため、軍事施設があることの解る駅名は改称せよ」と鉄道省および各鉄道会社に圧力をかけた事実がある為、買収以前に改称されていることは容易に想像できる)