異文化コミュニケーション(4)
外国人用体験プログラム

 2004年下田市は下田開港150周年の記念事業を行いました。大小合わせて14の事業を行い、大半の事業は現在も継続・発展しています。その中の一つに「異文化交流プログラム」があります。これは下田を訪れる外国人(短期長期滞在者、旅行者含む)に地域に根付く日本の生活文化を体験してもらう体験プログラムです。2004年の記念事業の後、下田市観光協会の調査企画部が中心になって、モニタリングや検討会を繰り返し行い、2008年に受け入れ態勢の完成を目指しています。ここでは、観光協会調査企画部が作成した現在進行中のプログラムソフトづくりの企画書をご覧下さい。
 
外国人用体験プログラム
外国人旅行者総合企画コーディネイトシステム
テーマ:黒船のまちでの日本文化体験
1854年日米和親条約で開港され、外国人が街中を自由に歩き、一般の日本人との交流を公式に許された日本で最初の町、つまり日本の民間異文化交流の発祥の地が下田です。下田は今現代の日本の民間異文化交流のソフトづくりの最先端を目指しています。
趣旨
今後増えると予想される外国人旅行者ならびに在日の外国人向けの受け入れ体制を整えることを目的とします。現在の日本の旅行業界では外国人の接待の仕方についての研修はありますが、彼らに提供するソフトの開発研究はまだ行われていないようです。下田開港150周年を機に、下田では外国人用日本文化体験プログラムの制作ならびにそれらを中心とした受け入れソフトのコーディネイトシステムの構築を進めております。茶道や歌舞伎といった伝統文化を紹介するワンパターンの外国人向け日本文化体験旅行でもなく、温泉旅館に泊まって、既成の観光施設に寄るだけの周遊観光でもない、現在も活きている日本文化体験ソフトを外国人旅行者のために提供することが、下田の外国人向け体験プログラムの目的です。

【想定している体験プログラムコース】

仏教寺院体験
仏教寺院での生活を体験します。静寂の中で修養生活を体験し、僧侶から生の声を聞きます。日本の宗教文化に関する疑問にすべて答えます。


和菓子づくり体験
職人とともに和菓子を作りながら、季節を大切にし、お茶の文化
と密接に結びついた和菓子の世界を探求します。

日本料理体験
地域で大切に育てられている日本料理を職人の話を聞きながら、賞味
します。板場で料理が作られるところを見学します。

日本画芸術体験
日本画を鑑賞し、その後実際に日本画を製作体験し、そのめざしている世界を体感します。


仏教文化体験
仏像や仏画を鑑賞し、写経や写仏、彫仏を体験して、仏の世界を体感します。


竹細工体験
地域の環境保全と結びついて地場産業として育つ竹細工を通して、文化の枠を超えた地域芸術を体験します。


伝統太鼓体験
日本の地域文化と密接に結びついた祭りの太鼓を体験します。また神社の祭礼の意味を知り、日本の民俗の世界を体感します。


日本の異文化交流を見る
16世紀から19世紀にかけての日本の異文化交流を「日本人から見た外国、外国から見た日本」をテーマとした歴史の画像資料を見ながら、体験します。


日本旅館体験
緊張感と癒しの双方を提供する日本旅館の空間のもつ意味を探りながら、日本流のサービスの中に隠れた日本人のこころを体感します。


*上記のプログラムは現在考えられるもので、今後はさらにコース数は増やしていくことを考えています。(考えられるプログラム⇒和凧つくり体験、そばうち体験、その他)

プログラムのコーディネイト

 上記の体験プログラムは単独で行われる場合だけでなく、これらの体験プログラム複数の組み合わせも可能です。また観光施設の利用、宿泊、ガイドによるまち歩きなどと組み合わせると地域全体を巨大な一つの文化体験テーマパークとして考えることもできます。

 日本文化体験プログラムと地域文化体験プログラム、さらに地域観光を組み合わせ、どこに比重を置くかで、どのような外国人旅行者のツアーにも対応が可能となります。日本で下田でしかできない総合受け入れシステムを作ることが最終目標です。

(コーディネイト案)


例1)
体験プログラム(菓子工房で和菓子づくり体験)
まち歩き(開国史跡を巡るガイドツアー)
日本旅館宿泊(伝統建築の温泉旅館で女将と話す)
体験プログラム(日米条約締結史跡で日本の異文化交流を見て聞いて)
観光施設(ロープウェイで開国下田港を展望)

例2)
体験プログラム(神社で伝統太鼓体験)
体験プログラム(料理屋で板前さんから日本料理を聞いて見て食す)
日本旅館宿泊(湯治場の旅館で心身を癒す)
日本の踊りを見学(下田の伝統芸能の下田節とお吉踊りを座敷で観賞)
観光施設(黒船遊覧船で下田湾を一周)

例3)
体験プログラム(日本画を美術館で鑑賞、自分で日本画制作体験)
日本旅館宿泊(海辺の日本旅館に泊まり、和の自然を体感する)
そばづくり体験(山の一軒家で日本そばを自分で作って食す)
観光施設(入り江の水族館で下田の海の自然を満喫する)
浜辺での朝食(浜辺でなべを囲みながら漁村の朝食を味わう)


コーディネイト運営母体⇒下田市観光協会

プログラムの講師・通訳・スタッフは原則すべて下田市観光協会が管理します。


現在、プログラムの中で使用することが考えられている言語は英語ですが、中国語での対応もできるようにその通訳システムの整備を急いでいます。
  
プログラムによって、講師が英語を話す場合、通訳が入る場合の両方が考えられます。

観光施設・宿泊施設での外国人旅行者への対応システムには語学適応・企画ソフトの面で差がありますが、それらも観光協会で把握し、旅行者に対応した内容を設定します。

留学生も含めて在日の外国人在住者の受け入れも外国人旅行者と同じように考えます。在日の外国人に関しましては、かなりのボリュームのあるコースの設定も考えられます。

【実施に向かっての課題】

①事務局の設置

 純粋に体験プログラムの開発だけであれば、教育委員会や振興公社でもよいし、申し込みを受け付けるだけであれば、下田市観光課でもよいでしょう。しかし、こちらから旅行エージェントと協力した積極的な広報を行い、かつ観光施設や宿泊施設、ガイドや体験施設など既存の団体組織との連携をとりながら、プログラム全体のコーディネイトを行うことを考えると、事務局は観光協会に置くことが望ましいのではないでしょうか。日本人旅行者を対象としたコーディネイティング・システムを観光課の中に構築することを現在進めていますが、外国人用のシステム開発も観光課が引き受けてくれれば、それに越したことはないでしょう。ただし、情報の収集・蓄積を考えた時、係りの人間が23年おきに代わる行政のシステムでは、情報センターとしての機能はあまり期待できないと思われます。

 体験プログラムの運営は事務局が行うことになります。参加者に応じた全体企画の製作、参加者(エージェント)との交渉、講師との打ち合わせ、通訳の手配、参加者の移動手段の確保、宿泊施設や観光施設等との連絡まで、細かい点まですべて事務局が行います。プログラムが機能するかどうかは事務局の働きにかかっていますので、その仕事はかなり高い質が要求されます。

②体験プログラムの開発・拡充

 運営は事務局の仕事であるが、新しいプログラムの開発、研修会の開催・その内容の検討については、事務局内部では荷が重過ぎると考えられます。企画内容を検討する組織を作る必要がある。自由な発想を展開できる企画と安定した運営の両方の組織がお互いに情報を交換しながら活動することで、施設や宿泊当も含めたプログラム全体のバランスがとれるものとなるでしょう。

③通訳のシステム化

 下田にある通訳の組織との連携をどのようにとっていくか。企画が有料である場合、通訳の参加も報酬を提供するものとするか、ボランティアとしての必要経費支給とするのか、プロもしくはセミプロの通訳者として通訳を委託する場合も含めて関係者との綿密な話し合いを行い、継続的な事業展開が可能になる方向で考えていくことが必要です。

④料金設定

 外国人体験プログラムをシステムとして定着させるためには、予算を無理なく確保しなければなりません。体験の講師・通訳その他、事務局を除くスタッフに経済的に納得できる金額を支払うことが必要です。また事務局を観光協会においた場合には手数料を徴収することも考えます。

⑤受け入れる外国人の対象

体験プログラムを中心として受け入れる外国人は次のように分類します。

   ⓐ在日の外国人留学
  ⓑ日本に居住している外国人
   ⓒ個人で日本を訪れている外国人旅行者
  ⓓツアーで日本を訪れる外国人旅行者
  ⓔ長期滞在で日本を訪れている外国人旅行者
   ⓕ下田市内ならびに近隣市町村に在住の外国人

 それぞれにあわせたソフト開発が必要になります。現在インバウンドの旅行形態として想定されているのはⓓのようですが、下田では上記すべての外国人を対象として受け入れられるシステム作りを考えます。

⑥プログラムのレベルをいくつかに分けて設定することも必要です。

   *30分以内でできるものなのか、2時間近く時間をかけて行うのかで、プログラムの内容は全く異なったものになります。単純に2時間のプログラムを30分に縮小して行うわけではありません。たとえば、和菓子作りでは2時間のプログラムは8名以上で一人1000円以上の料金設定が必要でしょう。場所は作業場を使わなければなりませんので、それなりの準備が必要になります。その場合は前日予約が必要でしょう。それに対し、店先で15分程度でできるプログラムも考えられます。現在簡単に体験できるキットを提案しています。

 

⑦研修・モニタリングについて

   *2005年から2007年にかけてスタッフの研修ならびにモニターによるプログラムの資料蓄積を行います。

   *通訳は現場での実地研修を積み重ねる必要があります。ガイド通訳とは異なり、作業の現場でのタイミングのよい通訳は、プログラムの効果を高めるためには是非必要です。そば打ち体験や和菓子作りの時は作業のテンポを狂わせないようなリズムでの通訳が大切です。旅館の女将の話の通訳は、女将の人生観がそのまま旅館の性格に表れることもあり、人間性を伝えるような通訳が必要です。通訳はプログラムの中でのコミュニケーションで重要な位置を占めていますが、語学だけがコミュニケーションではなく、現場の雰囲気と相まって初めてプログラムに適した通訳となります。その研修を現場で行うことが不可欠です。

   *通訳の研修は3種類に分けて行います。一つは日本語ができる外国人を対象としたモニタリングでの研修です。この時は通訳を必要としないので、通訳は後ろで講師(職人・女将等)とモニターのやり取りを聞いて自分がどのように通訳すればよいかを、落ち着いて確認することができます。二つ目は日本語ができない外国人をモニターとした時の研修です。この時はプログラムの雰囲気を壊さないような通訳の方法を身に着けることが目標となります。三つ目は通訳者がモニターとなって実際に体験する研修です。体験する側がどのような疑問を持つのか、気にかかる点は何かを認識することが目的です。

   *体験プログラムを提供する側は研修の中で、どのようにすれば最終的に採算がとれ、システムとして継続できるかを考えながら内容を検討していくことを要求されます。また通訳やアドバイザー等の技術スタッフには、提供する側の表現したいものが相手に伝わっているかどうかを脇から見てチェックすることを求めます。

 

⑧地域観光の外国人対応について

   *地域の観光施設・宿泊施設・料理飲食店・物販店での外国人対応に関して、外国人体験プログラム事務局・企画室が相談に乗ることも必要です。外国語ができることだけが外国人対応であると誤解している場合がありますが、これはコミュニケーションを理解していないことに原因があります。英語や中国語のパンフレットを置いて、片言の語学を話せれば良いというのではありません。体験プログラムと同じように、何を伝えたいのかを明確にし、それに沿ったソフトを作っていくことが要求されます。景色を楽しんでもらうのであれば、それにふさわしくないものは視界から除かなければなりません。これは日本人観光客に対しても同じことが言えますが、既存の観光施設・宿泊施設等は自分たちの常識から抜け出ることができず、気がつくことがありません。日本人相手ではごまかしが利きますが、外国人相手では自分たちの常識が通じないため、自分の行うべきソフト開発のテーマがより明確になります。外国人に対するソフト開発は日本人旅行者に対する質の高いサービスに直結することから、下田の外国人用体験プログラム開発は施設や店舗の質の向上に役立つことになるでしょう。

 

⑨教育旅行プログラムのソフト開発

   *小中学生を対象とした体験プログラムを下田市では開発中ですが、外国人を対象とした体験プログラムとの間での実施方法についての情報の共有が望まれます。外国人と小中学生に共通しているのは、「なぜ」「どうして」「これは何?」が体験プログラムへの参加動機の中で最も大きな比重を持っているからです。日本人の大人では当たり前の常識として、疑問を持ったこともないようなものに対して、素直に疑問を発することが可能なのが、子供と外国人です。そして最も単純な質問ほど答えることが難しいということを考えれば、この両者をプログラムの中で満足させることができれば、日本人の大人を満足させることなど簡単であると言えます。その意味で、小中学生を対象とした教育旅行プログラムと外国人用体験プログラムではその目的とすることが同じであることから、両者の間での情報交換は密にする必要があるでしょう。


2006年モニタリング研修の様子

  左上: 和菓子づくり

  右上: 和食板場見学

  左下: 日本の異文化交流体感

 

現在、下田市観光協会調査企画部、下田市観光交流課、下田市振興公社が中心になり、民間の組織・個人と協力して外国人受け入れのシステム作り・体験プログラムのための準備を進めています。ご意見やまたは参画ご希望の方は、下田市観光協会または下田市観光交流課までお問い合わせ下さい。

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