今週の短歌no.2

 わたしの歌歴(後藤人徳)
 昭和59年「賀茂短歌会」入会。現在編集発行人。
  歌集:「母胎」、「祈り」、「わが家の天使」

以下に紹介します作品は、作ったばかりのものをそのまま書いています。推敲の手があまり入っていません。未完成の部分が多々あると思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。...作者より
茜差す雲を頭上にミレー作「夕べの祈り」のごとく子とわれ


(注)近作は二重投稿となりますので掲載を中止しています。

旧作の備忘記録

2月28日(土)

18年2月1日(木)

朝(あした)よりあたりは靄に包まれて一月最後のひと日始まる

雲の無い空より激しく地に吹いて再び彼方へ風は去りたり

強風の吹きすさびたる海原に止むにやまれず白波が立つ

歌なんぞ止めてしまえと文明は一喝をせんわが躊躇(ためら)いに

深深と更けゆく夜半に爆音をたて飛行機の行くが聞える

2月27日(金)

18年1月31日(水)

分るとか出来るではなく黙々と一日一日するが仕事だ

帰宅した子が今週も真夜中にテレビ見ている音が聞こえる

施設にてみかんをむくを覚えてか籠のみかんがみなむかれてる

億光年かかり届きし光あり弥勒菩薩のごときかがやき

2月26日(木)

18年1月30日(火)

わが子なりまずわが子なり障害があるかないかはまず別にして

障害というレッテルを子に貼りてそれにこだわるわれと思うよ

自閉児と付けねば歌が作れんかわが子の歌がつくれないのか

雲間より光の束が幾筋もわれを目がけてふり注いでる

静かなる心を持てば砂浜を濡らして波がおだやかに引く

2月25日(水)

18年1月29日(月)

朝焼けの空にまわるく群れつどうカラスの声は山に響けり

忠魂の文字を彫られし碑(いしぶみ)が真東に向き朝日を受ける

鶏がカラスが犬が鳴き出して東の空が徐々に明らむ

節分の仕度している寺庭に紅梅の花満開となる

2月24日(火)

18年1月28日(日)

霜解けのしずくをまとい枯すすきいま日差し受け輝いている

寒い日が続きようやく紅梅の花がほころぶわが家の庭に

冬山を覆える霧は日差し受けひかりの粒子のように輝く

清浄の霜の枯野に光さしいま復活の歌声がする

2月23日(月)

18年1月26日(金)

雲の間のわずかな空に日は移りいまいっときの光差し来る

如月の開花の前の河津さくらいま西日受け枝輝けり

五時告げるチャイム響びかう街空は茜の色にいま染まりおり

何歳か何という名か炭のごとく焼かれていたり原爆により

2月22日(日)

18年1月25日(木)

花遅き梅の枝枝霜どけのしずくをつけて輝いている

単純に光を返し輝ける凪ぎたる海の静かなる音

海沿いに咲きたる椿よく見れば花もその葉もひび割れている

どう見られるかでなくしてどうするかそのまんま東氏今後問われる

自販機でジュースを買うを覚えた子紙幣でなくて硬貨欲しがる

2月21日(土)

18年1月21日(日)

一面に雲の覆える空にして厚いところあり薄いところあり

乾きたる河原の石にかすかなる鳴き声たてる鶺鴒一羽

雲覆う空にはあれど夜のあける東の山の端(は)明るみている

黒雲の低く覆える空の端(はし)うすき雲あり日はいまだなく

2月20日(金)

備忘記録

平成十八年のわたしの作品より              後藤人徳

給料の遅配二ヶ月事務室に妻の作れる弁当を()

こんなことこのまましていていいんかと(こだま)する声心に響く

いちまいの和紙ゆつくりと舞い落ちるごとくに見えて鷺の降りたつ

夕日背に長く伸びたるわが影が腕まくりして小走りに行く

石白く乾ける河原石投げて時を過ごせるわが子は二十歳(はたち)

 鉄骨を(あばら)のごとく曝しいるビニールハウスは廃業の果て

ごんごんと頭のなかに血がのぼり午前一時を眠られずいる

何歳か何という名か炭のごとく焼かれていたり原爆により

2月19日(木)

23年2月10日(木)

百歳の苦しみ知るはわずかなりわれはただただ見上げていたり

百歳の人に会いたる喜びを百歳となる君知るらんか

一歳のその姉いまだ幼くて起きよ起きよと死児を揺すぶる

雨という予報外れて暮れゆきぬこのカラカラもいつまで続く

2月18日(水)

18年1月19日(金)

傷付きしカモメが一羽汚れいて潮の満ち来る浜辺に立てり

障害者自立支援と云う言葉その実体と乖離している

障害者自立支援の法律が障害の子の負担増やす

施設にて無事に暮してゆけることわれの望みは自立ではない

障害者施設にわが子を預けおりわれも妻にもなすことがあり

自立にはほど遠けれど施設にて暮らすわが子に喜びよあれ

2月17日(火)

18年1月18日(木)

久々の雨にぬれたる山々は煙を立てるごとく霧湧く

乾きたる河原の石に雨が降り皆いちように輝いている

群れをなす雀 番(つがい)のヒヨドリとそれぞれ生きるスタイルを持つ

霧雨が銀杏の枝を濡らしゆきしずくは光る小枝こえだに

久々の雨が晴れたるもみじ山湯気のごとくに霧立ち上る


透析を終えたる妻は炬燵にてアンモナイトのごとく眠むる

2月16日(月)

18年1月17日(水)

結局はあれもこれもと欲ばりて書籍書類のなかに埋まる

わずかなる土地を耕し東京の子らに白菜大根送る

夕暮れの光をあびて遊覧船ゆっくり下田の港をめぐる

夕光を受けて黄金(こがね)となる波が今日一日を惜しみ寄せくる

2月15日(日)

18年1月16日(火)

施設より毎週戻る子のために土日を妻もわれも費やす

海沿いの小道に植えた芝桜春待ちかねてちらほら咲いてる

牧水がその燈台を訪いしという神子元島に灯りが点る

西空に龍の形の黒雲が首上げるなり赤みを帯びて

2月14日(土)

18年1月15日(月)

ようやくに今日の光が差して来る一月十四日午前九時半

河原には枯れたるものの多くしてただ瀬の音を聞くばかりなり

どんど焼きの炎を囲む子供らの赤き頬から歓声上がる

燃え上がる炎のなかにめいめいがダルマを投げる御札を投げる

竹爆ぜる音山里にこだましてどんどの炎燃えさかりゆく

燃え盛るどんどの炎を遠巻きにしばし声なく見つめていたり

2月13日(金)

18年1月14日(日)

いち早く光求めて鳴き出すか雄鶏(おんどり)の声夜半に聞こえる

葉の落ちし木蓮の枝毛衣(けごろも)をまとう莟が銀に輝く

いつよりか雲の隙間に現われて砕かれしごとく光差しくる

なにもない時こそ歌を作ろうよ生きてることの証(あかし)となして

なにごともなくて過ぎたる今日の日よなにごともないことの幸せ

2月12日(木)

18年1月12日(金)

雲覆海の彼方に光あり神子元島(みこもとじま)がくっきり浮ぶ

沖合いの雲低ければ光うけ雪山(ゆきやま)のごと輝いている

冬の日は早くも暮れて夜となり街の明りのまぶしく感ず

山もみな闇に覆われ暗きなか青くともれる信号ひとつ

2月11日(水)

18年1月11日(木)

昨日の雲は何処(いずこ)に去りたるや青空のもと深く息すう

直接に受けたる恩を直接に返したことがあっただろうか

木炭の燃えるがごとき色をなす漆黒の山日没の空

2月10日(火)

18年1月10日(水)

一日に一度は空を見上げてる曇っていても雨になっても

雲厚く覆える空の見てごらん光の筋が海に注ぐよ

大空に雲あればこそ日の光そのひと筋が神のごとしも

2月9日(月)

18年1月9日(火)(2)

強風に雲の散りたる空青く日はおだやかに笹の葉照らす

強き風笹原揺すりおだやかに差す冬の日を返し止まざり

強風にすすきの絮(わた)は飛び去りてわれ歓声をまぼろしに聞く

黒雲を沈む余光が染めている諦めるなよ明日がまだある

2月8日(日)

18年1月9日(火)(1)

風は止み穏かに日が差して来ぬ一月八日成人式の日

雲早く流るるさまを仰ぎいてわれも動けるごとくに感ず

正月の明けたる山のおだやかさ枯木が風とたわむれている

菜の花の咲きそろいたる畑には一月八日の日が差している

トタン屋根の剥がれし箇所が風に鳴るはや正月も明けて八日目

2月7日(土)

18年1月8日(月)

椎の木の騒げる中に忠魂碑朝の光を浴びてたちおり

強風に竹群撓うを背景に忠魂碑立つ微動だにせず

強風に千切れ散らばる木の枝が歩める道をしばしば塞ぐ

窓越しに見る竹林は無音にて打ち靡きつつ風に抗(あらが)う

冬の日が沈まんとして山の端(は)を覆える雲を赤く染めたり

赤丸の印付けたるカレンダー子は眺めおりわが休日を


2月6日(金)

(注)近作は二重投稿となりますので掲載を中止しています。

18年1月7日(日)

少しずつ神は知るべしさもなくばその光にて失明をする

キリストに会いたるパウロは三日間その光にて視力失う

分らない聖書の箇所はそのままに捨て置け神が解いくれるよ

雨の日は聖書を読んで太陽のような光でこころを照らせ

雨上る山はうれしい靄かむり生まれたままの姿を見せる

雨上る空は西より晴れてゆき暮れ急ぎつつ茜色する

2月5日

旧作備忘記録

18年1月6日(土)

寒風にゆられて顔を日に向けるむしろ喜ぶごとき水仙

草花は日に向くことを自ずからわきまえているだのに私は

懸命に光に向きて生きんとすこの花のごとわれ生きゆかん

もろもろをあまねく照らす天つ日のごとく生きたき思い湧きくる

完全に空中に身を浮かせたり空に向かいて跳ねたる魚が

枯れ山に影差しそめる頃となりカラスの声がこころにとどく

箱根路を走りしことはなけれでも一途に尽くせし若き日があり

2月4日

18年1月4日(木)箱根駅伝(2)

旧作備忘記録

快調に飛ばしたモグスまさかまさか大ブレーキとなりて抜かれる

箱根路を走り下れば平坦の道が登りに感じると言う

自分との戦いならん箱根駅伝二十数キロ走り抜くのは

繰上げのスタートとなりアンカーに神大選手は襷渡せず

昨年の難波選手のブレーキが力となるや順大優勝

来年の箱根駅伝競走に向けスタートがすでにきられる

2月3日

旧作備忘記録

18年1月4日(木)箱根駅伝(1)

雨のあと雲のあいだに青空がのぞき始めた正月三日(みっか)

カラス鳴きその声とよむ山里の正月三日の朝明けにけり

靄立てるなかから出(い)でて鷺一羽さびしらにまた靄に隠れる

昨日の往路を思い浮べたり今日の復路に思い馳(は)せつつ

四分の貯金を一区で作れるも五区の時点でマイナスとなる
長距離の逃げ切り策の難しさ今年の箱根駅伝に見る

2月2日

旧作備忘記録

18年1月3日(水)

初夢のこと早や忘れうす靄のかかれる朝の山を見渡す

正月に梅の咲きたる年ありし昨年は遅く今年も遅い

鋭心を包めるごとくうす靄が枯れたる木々の林を覆う

良きことが起こる予感と正月を働く息子にメールを送る

ぬばたまの夜を働くわが息子光に向きて生きよと祈る

あうんの形をとれる狛犬が安全祈願の社を守る

正月を祝うごとくに響きあうここの浅瀬の水と小石は

遠吠えの犬につられてつぎつぎと声こだまする正月の朝

正月も明けて二日目雲覆う東の空が桃色となる

2月1日(日)

         23年1月8日、9日(日)

正月の七日の朝のこの寒さ池の枯葉もともに凍れる

七草の粥に混じれる角硬きお供え餅をかみしめている

一畳のたたみの広さここに子の置かれていたることを思えば

一歳のその子の姉も幼くて起きよおきよと死児を揺すぶる

開花にはまだ遠けれど確実に赤き蕾を梅たちは持つ

昨年は梅の実ゼロとなりたれど今年こそはと見上げていたり

赤いバラ散りたる後に黄の色が咲き始めたり同じ茎より