今週の短歌NO.26

 わたしの歌歴(後藤人徳)
 昭和59年「賀茂短歌会」入会。現在編集発行人。
  歌集:「母胎」、「祈り」

以下に紹介します作品は、作ったばかりのものをそのまま書いています。推敲の手があまり入っていません。未完成の部分が多々あると思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。...作者より


茜差す雲を頭上にミレー作「夕べの祈り」のごとく子とわれ


今年の目標は口語短歌に挑戦したいと思います。多少歌が軽くなるかもしれませんが、またまだその力がないとも思いますが挑戦したいと思います。また去年歌集を作ることを色々な理由で断念しましたが、今年はせめて三郎に関する歌だけを集めて一冊にまとめられたらと思っています。


11月30日(金)参考:日々の気持ちを短歌に(ブログ)

一瞬がこの一瞬が貴重なるわが人生と思い定める

なんでもなく今過ぎてゆく一瞬がこの一瞬がいとしく思う

明朝は六時に家を出発す東京に行き子等と会うため

めいめいが一生懸命生きている時計屋の時計たちのごとくに

自販機の缶コーヒー温しかじかめる手に包み持つ祈るかたちに

11月29日(木)

政治家よ一寸先が闇などと弱音言うまい君らは光

ささやかなわが歌なれどギャラリーの展示の隙間さりげなくうめる

里山の秋を描ける絵に添いてわが秋の歌さりげなくあり

わがうたをほめていたとうギャラリーの友は得意の顔にて語る

縁遠くなりたる友の植えくれし柊の花白色に咲く

11月28日(水)

仮免の車に乗っている気分そんな政権もういりません

対岸の山に朝日が輝くを未来のようにまぶしみて見る

対岸の山はもみじに彩られわれの未来を見るごと眩し

赤いろが今年少しつぶやける友と天城の峠越えたり

生きにくき世になろうともまっすぐに育ちておくれわれの孫なら

11月27日(火)

もみじ葉に燃える山々煙立つごとくに空へ霧昇りゆく

葉の先に今雨粒が光りいる百年あるいは千年のごと

志(こころざし)高くに持ちて「経営者心得」なども読みし頃あり

経営学労務管理は学びしも労働心得は学ばざりしも

大学に経営学を学びしも労働者にて終る一世か

11月26日(月)

優勝の祝い新聞配達にオレンジ色のタオル頂く

間違いに気づいたならばいったんは元に戻るが常道ならん

民主党の影に隠れてうごめける労働貴族をわれはかなしむ

すっかりと黄色となりし銀杏の木朝の光にかがやいている

踊り子の歩みし小道天城路は今ももみじのトンネルとなる

木々覆う小路の石は苔むしてみなやわらかきみどりいろなす

11月25日(日)

散るときはくれないいろになるんだと思い定めしごときもみじ葉

今日の日のこの一瞬が命なり昨日ではなく明日でもなし

わが部屋の花瓶のなかでいっぱいに山茶花の花咲き開きたり

自閉症の子は黙々とリンゴ食(は)みわれはさくさく信濃を思う

障害のわが子のためと信濃より友はリンゴを送りくれたり

11月24日(土)

自閉症患い言葉言えぬ子が夢にはあれど話しかけたり

一匹の蟻を避けんと爪先を浮かせたる時ぐらりとよろけぬ

飽食の世の有り余るエネルギーを若者たちはゲームに注ぐ

羽ばたきの時の間体あやうかり夕焼けのなか一羽飛ぶ鴨

沖合いを光りつつ行く白き船なにか幸せ運ぶごとくに

11月23日(金)

施錠をしマスクも掛けて外出す社会の進歩のこれが形か

商品の撤去されたる店舗には三輪車押し笑まう幼子

書店にて心慰むわれのごと妻も買物しているだろう

久々の二人の旅も透析の妻を思いて日帰りとする

いつしらに大道芸に笑いおるわれの傍(かた)えに妻の静けし

11月22日(木)

醜聞を書くしかなきや週刊誌それにまつわるハエかおのれは

猛々としておりたるも泡立ち草はや絮(わた)つけて枯れ始めたり

おしめりを受けて畑の玉ネギの萎れし苗がもちなおしおり

庭隅に積み置かれたるコスモスにひっそりとして蜆蝶舞う

蜜柑箱共に並べて学びたる十五の友の頬赤かりき

11月21日(水)

世襲制禁止はよいが民主党組合支援の縁切ってくれ

政治家よ一寸先が闇などと弱音を吐くな君らが光

爛れたる恋など知らぬ霜月のいまだ紅蓮(ぐれん)の鶏頭のいろ

コスモスの咲く道施設へ戻る子よ「お花きれい」といえばうなずく

一子逝き一子心をわずらえどわれの短歌の財産となる

11月20日(火)

どのような世になるだろう新しい時代がそろそろ来てもよいころ

ようやくに銀杏色づき始めたり伊豆の里山秋深みたり

対岸の山に朝の日が差し初(そ)める日射し恋しき季(とき)となりたり

百年に満たぬ短き三国の歴史後漢のあと花ひらく

日本の伊豆の山間夜(よる)更けて聖書読みいる不思議を思う

11月19日(月)

高きことお前も好きか電柱の頂きに立ちカラス鳴きたり

俗にして俗を越えたる力持つドストエフスキー美空ひばりも

「わたしから歌がなくなりました。」あゝ美空ひばりの記しし手紙

生活感なしと啄木の切捨てし「太田」すなわち木下杢太郎

存在を際立たせしか輪郭をくっきり黒く描がけるルオー

11月18日(日)

資格なく誇る仕事もなけれでもぼちぼち生きてゆかんと思う

今日からはマイペースにて生きゆかんお先にどうぞわれは一服

九十四をひと世となししなかさんは七十歳にて作歌始めし

民のため身を磔刑(たっけい)にささげたりイエスキリスト佐倉惣五郎

美しきJと言いたり日本とイエスのことを内村鑑三

11月17日(土)

新しき時代は来るや解散の日本列島寒波が覆う

国民のための政治を各党の思い色々あるといえども

太刀を立て両手に握る松陰像海に向うも伏し目がちなり

松陰の記憶保ちて育ちけむ潜みいし御堂を覆える樹木

餌刻む音を聞きつけ鳥小屋で鳴き騒ぎいる鶏の声

11月16日(金)

マチス作「夢」の女性は眠りおりアンモナイトの化石のように

廃業のビニールハウス茫々の草の栖(すみか)となり果てにけり

数本の野菊を挿しし細き瓶洗面台に妻置けるらし

日を呑みて赤くなりたる白雲が酔いしごとくに横たわりおり

今日の日を彼方に送り山々が静かに黙し眠らんとする

11月15日(木)

生きるのが難(かた)き昔の職人の命込めたる陶器見ている

「タンカってなんですか」「たいしたことないですよ」というはにかみながら

木枯しにもまれていたる山の木々悲鳴のごとし青空の下

新聞の新年詠の依頼でも今この一瞬をわれは歌わん

歌ひとつ作りあぐねる畑隅(はたすみ)に野菊の花が静かにゆれる

11月14日(水)

洞抱えふた分れする椎の木よ産土(うぶすな)の地に深く根を張る

神々を捨てし報いか山荒れて夜盗のごとく獣(けもの)降りくる

夕暮れの肌寒きなかを定期バス乗る人のなく折り返したり

野菊咲く泡立ち草に距離を置きアザミの側でやすらいている

夕暮れる裏の山より聞えくる妻恋いおるや鹿の鳴き声

11月13日(火)

われもまた眠れずにおり轟音に去りたる単車また戻り来る

帰宅日を雨に遊びに行けぬ子よ二階に登り外を見ている

小雨降る外を眺めていたる子よ網戸を開けてなおも見ている

白鷺の鋭(と)き嘴(くちばし)に捕えられ水より出(い)でて魚きらめく

ものわすれぼけといいあいわらい合う霜月の夜(よ)のわれとわが妻

11月12日(月)

椎の実を膝に鎮座す忠魂碑古武士ごとくありて苔むす

竜神となりて守るか眼光のごとく雲間の光差しくる

道連れになるかのように後を追い二枚の枯葉散りて舞いたり

山里に花を咲かせる石蕗(つわぶき)が海を恋うごと首を曲げいる

施設より久々帰りうれしいかわが子は夜を明かしていたり

真夜中に早や時告ぐる雄鶏よ目覚めてわれもそれを聞きいる

11月11日(日)

さざんかのガラスのごとき花びらが今朝の寒さに開き初めたり

大きなる八つ手の葉かげにまるまるとしたる小さな花がかたまる

里山もようやく色がつきはじむ伊豆半島が晩秋となる

鶏頭の花は紅蓮となりにけり妖しき気配ただよわせつつ

陽に向きて昼のススキは輝けりつやめくほどのいろをしている

11月10日(土)

八つ手の葉ひかりもとめるもとにしてかげとなりたる野菊ひともと

死に至る病癒されキリストとわが魂よ永久(とわ)に生きゆけ

魂を神に委ねて安堵せしごとくにあれよわれの死顔

朝なあさな泡白くぬり顔剃るはわが現役の証なるべし

大きなる古木をまいている蔓よ自ずとものに添いつつ生きる

箕作(みつくり)は礪杵道作(ときのどうさく)流罪の地名前なまりて地名となれり   礪杵道作(大津皇子の舎人):大津皇子処刑の折

、伊豆に流される。(日本書記)
 

11月9日(金)

子を託し養護施設を出(い)づるとき解放さるる哀しみぞ湧く

寒さ増す庭に明るく咲いている石蕗の花黄の色をして

かたまりて黄菊は咲けどあたりにはどこにも蝶も蜂も見えない

汚れもの素手で掴む子それほどに心がきれいな証拠なんだよ

歯を磨かず顔も洗わぬ子なれども心はとても清潔なんだ

11月8日(木)

病身を虐げ農事する妻よ汗ばむ白き顔のふり向く

流れゆく水見つめいるわが影よひとつところにとどまりている

青空の映る小さな水たまり子供の靴が踏めば乱るる

マルコ伝に「わが神われを見捨てしか」と叫び逝きにしイエスを思う

地に落ちて死が沢山の実を結ぶ一粒の麦のごとくありたし

11月7日(水)

聞くことの尊きことを教えるや大き仏の耳を見ている

満身の力を込めてバラは今固き蕾を開かんとする

雉鳴けり子を亡くしたる夜の空を仰ぎ忍びしわが声に似て

生きおればわれの背丈を越えおるか今目の前に子が生きおれば

逝きし子は返らぬものと知りおれどまた思いたり生きておればと

流れゆく水を見ているわが影よひとつところにとどまりている

11月6日(火)

施設より帰りわが子が穏やかにビデオ見ている至福の時間

自閉症患うわが子おだやかな今日は凪ぎたる海に似ている

もの言えぬ自閉症児よせせらぎにささやくように小石を投げる

流木の横たわりいる砂浜の砂を巻き上げ秋の風吹く

空染める夕日に向い海中の中行くように走る子とわれ

障害を持つ子と今日の一日が無事に過ぎたりそれだけで足る

11月5日(月)

対岸の山に朝日が差し初(そ)めて今日一日が始まらんとす

対岸は二時間早く陽がさせば家きらきらと輝いている

一滴の露まっすぐに落ちてきてわれの頭を直撃したり

施設より帰りたる子よものいわぬなれどもわれの心なごます

子を託し施設を出るに振り向けばバイバイと手を子が上げている

施設へとわが子を託し帰りたり解放されし哀しみをもち

11月4日(日)

毎朝のテレビドラマを二人して観ているいつしか日課となりぬ

レストランに家族そろって食事したこともあったが子の小さき頃

いっぱいに鋏を開き沢蟹がわれに身構え道を横切る

草の実は生きんがために必死なりズボンに付くをはがして捨てる

伯仲の大統領選ハリケーン激しく襲う両陣営を

沈む日を名残惜しげに見ているか枯木にまろく雀鈴なり

世の中に何もなさずに来しわれか友の叙勲を聞きて思いぬ

11月3日(土)

真昼間の闇深ければエレベーター昇らんとするその暗闇を

やらずともよいと言えども施設にて躾けておらん子は混乱す

群れよりは離るる小さきひと本の泡立ち草が花咲かせおり

潮風にあたりしためか柿の葉が今年はあまり色づかぬなり

力瘤して懸命に生きてゆく生きものなんだ銀杏もわれも

雲のなく風のなき日はただ一人枯れしススキに触りつつ行く

陽を浴びてうねれる波が砂粒を巻き込みながら崩れ落ちたり

長々と伸びしわが影石塀に受け止められて等身となる

11月2日(金)

利息では食えなぬ時代よ父の世と変わらず柿はあまた実れど   (旧作推敲)

鉄板のごとく平たくなれる缶仕事に向う道に転がる         (旧作推敲)

降り口に扇風機置き空調のなき事務室に風送り込む        (旧作推敲)

わが体作れる水よ道端の水溜りさえ天を写せり           (旧作推敲)

透析に血管太くなれる手をよいしょと卓に妻横たえる        (旧作推敲)

もの言えぬ子は石を投げ石をなげ川と語らうごとく続ける     (旧作推敲)

11月1日(木)

雑草のなかの野菊が咲き乱れ今虫たちの楽園となる

三時には早や西空に日がかげり急に寒さをおぼえてきたり

西空に日が傾くとたちまちに鹿のせつなく鳴く声がする

真夏日のごとくにいまだ燃えるごとカンナは赤き花をかかげる

古本がネットで売れた通知受け探しているがまだ見つからぬ