今週の短歌28

 わたしの歌歴(後藤人徳)
 昭和59年「賀茂短歌会」入会。現在編集発行人。
  歌集:「母胎」、「祈り」、「わが家の天使」

以下に紹介します作品は、作ったばかりのものをそのまま書いています。推敲の手があまり入っていません。未完成の部分が多々あると思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。...作者より


茜差す雲を頭上にミレー作「夕べの祈り」のごとく子とわれ



2月28日(木)参考:日々の気持ちを短歌に(ブログ

湯煙のごとくに靄を身にまとい横たわりおり天城連山

子を託し帰らんとするに荒々しその子の顔を思い出しおり

施設にて生きるほかなし子に言いて自分自身に言い聞かせたり

ある時は怒りのごとく感じたり赤きこぶしのアロエの花よ

ジャガイモを植え終りたり夜よりは予報通りに雨になりたり

2月27日(水)

わが庭のチューリップの芽が伸びているわが子の命日近づいている

チューリップを指さし愛(め)でしわが子にて一歳半の命終えたり

病院に母を連れ行くことなどもしみじみとわが心を満たす

孝行をせずに生ききてようやくに母を病院に連れて行く幸

神様に向うごとくに歌作る上から目線を戒めるため

2月26日(火))

鉢植えの梅の木あまた植えおりし主(あるじ)いぬ今花咲きそろう

ジャガイモに畑耕し午後からは短歌の会に出席をする

新聞に二週連続載ってたと歌会の席歌友に言われる

ひそやかに新聞投稿せしことを罪のごとくに恥入りている

寒ければ二名欠席したれども今日の歌会無事終りたり

2月25日(月)

寒風の吹き荒(すさ)ぶなか菜の花はその喜びの色に揺れおり

セーターを透り下着をとおりぬけ寒風はただにわが肌襲う

晴れわたり日はさんさんと注げども寒気を帯びる風すざまじき

啄木の短歌を読みて思うなり歌は「べし」ではあらざることを

短歌とは短歌とは何今日もまた短歌を思いひと日(ひ)暮れゆく

2月24日(日)

鶯かうぐいすが早や鳴いている確かにうぐいすかたことの声

二週間ぶりに帰れる子を待てり昼温かきバス停にいて

おだやかな風にゆれいる枯草が昼の光をやわらかく反す

海中に眠りていたる伊豆半島目覚めていまだ六十万年

今月は日数少なき月なるに歌稿がいまだ揃わずにいる

2月23日(土)

朝の日に照らされている水面に鴨の番(つがい)か水脈(みお)引きて行く

亡くなりし子の思い出はしっかりと心の中にしまっておかん

早世の子はわが内に思い出として生き生きと生きているなり

しっかりと日差しを浴びて蕗の薹枯草の中に花開きおり

寒風に吹かれておれど蕗の薹はや春来たること告げて咲く

2月22日(金)

歌会に出席をする百二歳の渡辺さんに励まされたり

ようやくに産み始めたるにわとりも寒さのゆえか今日はゼロなり

親離れせぬ障害のある子なり子離れ出来ぬ親のわれなり

障害者福祉会より隣町脱退をする老齢化して

社会主義思想に溺れし啄木の短歌に思想の押しつけはなし

裂けるほど口を開きて歯の治療道路工事のごとくに穿つ

2月21日(木)

透析の副作用なるか眼の受診するため妻を送りて行けり

診察を受けている間(ま)を車にて本読みながら妻を待ちたり

駐車料支払いている受診印もらい忘れし妻叱りつつ

枯れそうな受粉樹の梅一二輪祈りのごとく花開きたり

枯れそうな受粉樹のこと七十になり気に留めしものの一つに

2月20日(水)

紅梅が細枝にまで花咲かせ真赤になりて小鳥いざなう

朝(あした)から冷たい雨が降りている国会中継見つつけだるし

幾千の露の付きたる枝垂桜枯れ枝おおうつゆのひかりが

吹き込みてなれる雨漏れ該当はせぬと保険の会社は言えり

吹き込みでなく屋根自体損傷し雨漏れすれば保険下りるも

2月19日(火)

新聞に入選せんするも平静を装いている妻が知るまで

嬉しくも読売歌壇に採られたり岡野弘彦選はことさら

短歌にて悩めるわれのしあわせよ隕石落下の記事を見ている

久しぶり雨漏りがする強烈な春一番のせいかもしれぬ

雨漏りも仕方がなきか建ててより三十五年過ぎしわが家

2月18日(月)

枯草に止りているはめじろなりヒヨドリ去るを待ちているらし

大島の椿を見んと出掛けたる妻を待ちおり一人の家に

妻おらぬ日曜なれば今週は子は帰宅せず施設に過す

週二日帰宅する日を待ちわびて子は施設にて過しいるらし

親離れ出来ぬ障害持つ子にてわれも子離れ出来ぬ親なり

2月17日(日)

紅梅の蜜の吸い季(どき)心得てめじろは群れとなりて飛びくる

野良犬の坐りていたる草むらを覗きて見るに今朝は見えざり

湧き出(い)ずる泉のほとり?梅の花が匂えり水のごとくに

百二歳九十五歳歌会の最年少は七十のわれ

千余年続いてきたり日本の短歌(うた)に流るる目に見えぬもの

2月16日(土)

紅梅は紅梅として白梅は白梅として咲くばかりなり

寒き雨降りしきるなか出かけ行く予約しいる町の歯医者に

わが口の小さきことを思い知る歯を治療するときはなおさら

裂けるほど口は開けられ苦しかり道路工事のごと歯の治療

失敗をしたと言いては麻酔かけまた歯の研磨繰り返したり

来週の金曜日また予約して肩の荷おろし歯科医院出ず

2月15日(金)

白梅は白梅の性(さが)紅梅は紅梅の性咲くばかりなり

今日ひと日(ひ)生きのびたればそれでいい今日から一日一生として

からっぽの心になって何詠うからからからの歌となるらん

いつわりの心となりて何詠う偽り事の歌となるらん

温かく晴れたる今日は老いびとも畑に出(い)でて鍬振るいおり

2月14日(木)

歌会も計六名に百二歳九十五歳の出席含め

醜態を晒したくなし三月にもう百二歳歌友(とも)笑い言う

なにとなく心の沈むときのあり富士の写真を眺めていたり

雪被り雄々しく立てる富士山を眺めていれば心鎮まる

高校の三年間を富士山の麓にぼーと過ししわれか

2月13日(水)

菜の花は何も言わずに咲いてるがいつもながらに頭が下る

鋭(と)き声を時々発しヒヨドリが梅の花吸い独り占めする

慎太郎節をひさびさ聞きほれる予算委員会思わぬ収穫

発生主義複式簿記を力説す負債ばかりを皆危惧すれば

このままで地球がゆけば六十年後に滅びると警鐘鳴らす

暴走の老人などと謙遜す石原慎太郎氏惚けてはおらぬ

2月12日(火)

西空の雲を真赤に染めながら山間の里夜明け迎える

はだか木にふくれて丸き雀らがすずなりとなる寒き朝明け

単独で行動をするオランウータン争いを避け群れさけるとう

森でなくビルの谷間に暮す子ら孤独なオランウータンなるか

仕事なき田舎を離れ都会にて生きいる子等よ無事に過せよ

2月11日(月)

新潟の友に頂き福寿草伊豆のわが家に満開となる

日の当たる車の中は温(ぬく)ければ風さけしばし日向ぼこする

ヒヨドリが見張りておれば柿の木に止り目白は紅梅を見る

七色となり日没の日の光はげしくわれの眼(まなこ)射りたり

今日の日が暮れなんとする一日をどれだけわれは生きえたろうか

2月10日(日)

根方には早や青き葉が生えている枯れすすき穂をすでに飛ばして

NHK全国短歌大会放映す伊豆の知りびと壇上におり

NHKホールに一度立ちしこと二十七年前の大会

ビギナーズラックであろう三年目に短歌大会特選となる

特選は佐佐木幸綱選なりてサインをしたる著書頂きし

2月9日(土)

けだもののうなり声なりほんとうは春一番というんだろうが

風強く冷たい今日は籠りては国会中継見つつ過ごさん

新しい維新の会の質問も国会中継新鮮に聞く

みかんなど庭に投げればひよどりがすっかり慣れて縄張りとする

わが庭を縄張りとしてヒヨドリが梅の木に来る目白を威す

2月8日(金)

新しい時代は来るか明け方のわが里霧に覆われている

生き生きと野党となりて質問す辻本氏しかり長妻氏しかり

それぞれに持ち味ありて辻本氏長妻氏など野党が似合う

啄木の歌の魅力は何だろう十年くらいかけ見直そう

啄木の最後看取りし歌人なり啄木牧水不思議な関係


2月7日(木)
震源はソロモン諸島市役所の津波公報鳴り止まぬなり
なすことをなしとげたると安らぎに似て枯草は霜かぶりおり
枝先に留まりている一粒の露に宇宙の力漲(みなぎ)る
鈴なりになりて雀が騒がしき桜の季(とき)はまだ先なるに
短歌とは何かの思いきざしたり底なし井戸をのぞくごとくに

2月6日(水)

寒きゆえ開花遅れる河津さくら今日から桜祭始まる

菜の花は黄色の花を誇れども河津桜の開花遅れる

雪深き新潟の友に賜わりし福寿草今庭に咲きおり

紅梅が咲き白梅が咲き始めわが家の庭に春訪れぬ

紅梅の花を掲げて揺れているなにか喜びを表すように

枝先に咲き登りたる紅梅の生きる力を見上げていたり

2月5日(火)

温かき雨が朝から降りている天城は今日は雪かもしれぬ

温かき雨降るなりと見ておれば西空にいま虹がかかれり

晴れ間より雨ふりてきてぽっかりと明るき虹が山に掛かれり

紅梅を見上げる空にああ虹がなにか祝うがごとくかかれり

施設へと子を送りゆく西空に今かがやいて虹が掛かれり

2月4日(月)

逃げたるか捨てられたるか知らねども早朝の道を歩く犬おり

霜踏みて歩ける道は冷たくて水仙の花匂いくるなり

産土の神社の前を通るとき自ずとわれの頭垂れたり

対岸の寺より聞える鬼やらい子の誕生日祝いくれるか

子の好きなアピタに行って昼をとる今日は息子の誕生日なり

おさまりのラーメンたのみ昼餉とす今日は息子の誕生日なり

2月3日(日)

カレンダー破り忘れていたりけりもう一ヶ月過ぎてしまった

紅梅の開きはじめし花を今吹き散らさんと強風揺する

里にあるたったひとつのガソリンのスタンドなれば存続願う

朝方の雨はすっかり上がりたりぽかぽか春の日差しが温し

立春にあと一日の今日なれば春一番と呼べぬ強風

温かき風に誘われ枝々の紅梅のつぼみ開き始める

2月2日(土)

すっきりと穂を飛ばしたる枯れすすきすがすが立てり霜置く野辺に

湿りたる霜どけの道を歩み行く心のゆるぶ心地などして

カーテンを厚く閉ざせし屋内(やぬち)よりはげしく子供の泣く声がする

題詠「底」

引出しに退職届入れしまま忙(せわ)しく今日も地の底にいる

何時よりか脱出願う蟹ひとつ地底のわれの足もとにいる

こんなことこのまましていていいのかとわが心底に谺する声

2月1日(金)

ようやくに開き始めた紅梅を何か自分のごとく喜ぶ

菜の花が咲き紅梅が咲き始む霜置く伊豆に春きざしたり

一輪のカーネーションを挿しているもう一週間経っただろうか

静岡のてんかん病院へ施設より向った息子結果はどうか

天城嶺は凍りていぬか病院に行った息子が峠を帰る