今週の短歌no.30

 わたしの歌歴(後藤人徳)
 昭和59年「賀茂短歌会」入会。現在編集発行人。
  歌集:「母胎」、「祈り」、「わが家の天使」

以下に紹介します作品は、作ったばかりのものをそのまま書いています。推敲の手があまり入っていません。未完成の部分が多々あると思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。...作者より


茜差す雲を頭上にミレー作「夕べの祈り」のごとく子とわれ



3月31日(日)参考:日々の気持ちを短歌に(ブログ)

コンクリの隙間に生(あ)れしすみれ草除草剤受け萎れてしまう

車窓より振り返り見る古里の天城の山を霧のつつめり

皆のためみかんをむいてくれたのか子は一晩に箱いっぱいを

透析の妻に代りて買物に子を連れて行く昼食のため

流れつき中洲に生えし菜の花よ仲間増やしてにぎわっている

3月30日(土)

見舞いより帰らんとするわれの背にベットのなかより気遣いくるる

黄の色は希望の色か雪解けの道にかがやくたんぽぽの花

去年とも変わらぬはずの菜の花がなぜか希望のととくに見える

山茶花の花はさすがに咲きおらず椿の花が枝にとどまる

母親を診療所へと連れ行けば地元の人が話しかけて来る

3月29日(金)

遠山が白くけぶるは山ざくら満開となる証(あかし)なるべし

朝霧にかすむ遠山ひとところぽっかり浮かぶ山ざくらばな

どこよりか流れてきたる種子ならん河原いちめん菜の花の咲く

うぐいすがいつのまにやらすっかりと自慢のノドを誇り始める

明日もまた夏日の予報遅霜の害なく初夏になってくれるや

3月28日(木)

黄の色は希望の色か霜解けの道にたんぽぽかがやいている

サッカーの試合見ていて寝不足と打ち合わせにて会長が言う

前年の実績でなく予算との比較するのが腑に落ちずいる

帰りたるわれを待ちいて妻は言う常葉菊川勝利のことを

サッカーは敗れたれども野球では常葉菊川高校勝利す

3月27日(水)

霧深き天城峠を下りゆく湯煙のなか走るごとくに

せいせいと染井吉野が咲かぬのはてんぐ巣病にかかったためか

今週もまた新聞に載っている地方版なれど妻の短歌が

桃色のチューリップの花開きたり子の命日が近づいている

チューリップの全ての花を摘みしこと逝きしわが子の思い出のひとつ

3月26日(火)

昨年は実のならざりし柿の木に新しき芽が吹き始めたり

せっかくに柿の若葉が出(い)できたりどうか霜など降(お)りないでくれ

春休み帰りたる子は興奮し今夜も寝ずに騒ぐだろうか

妻と子と天城を越えてアピタまでドライブをして買物に行く

明日はビデオショップに子を連れて行かねばならず図書館も行かん

3月25日(月)

どんよりと曇りているが菜の花の畑がありて心やすらぐ

施設より帰りたる子は夜も寝ずこの春休み満喫をする

あれこれと役を引受くこの上はまずわたくしを捨てねばならぬ

妻や子も公務のためには後回しブログもそろそろ捨てる頃なるか

短歌などに夢中になってるわたくしに区長の役がつとまるらんか

3月24日(日)

障害を持ちて生まれて父母(ちちはは)に別れ施設に十年を経る

施設より出(い)でて秋田に行くという障害の子よ元気でいてね

幼くて別れし母が引き取ると明日秋田から遙々と来る

十年を施設に暮らし引き取られ行く障害の子よ涙ふく

体格の良い丹蔵を押し出せり見事勝ち越し栃飛龍関

3月23日(土)

改選の年を迎えてまたもめる文化協会会長人事

あれこれと役引き受けしわれなれば今度ばかりはご辞退をする

ここのところ出ること多し昨日(さくじつ)も今日も明日(あした)もまた用事あり

帰るなり十両の勝負を調べればああ栃飛龍敗れていたり

再びの夢を描けよ常葉菊川一回戦は熱戦となる

ホームラン二本を放つ野武士たち常葉菊川一勝となる

3月22日(金)

いっぱいに梅の実が付く遅霜に会わず大きく育ちておくれ

何回もチェックしたのにエクセルの式の誤りチェック漏れなり

年度末各種会計を任されておればさすがに気持が焦る

施設での評議委員会思うことぶちまけたればしおれて帰る

栃飛龍今日勝ちたればあと一歩あと一勝で勝ち越しとなる

3月21日(木)

祖の墓のそばに子の墓造りたり一山二山越え参り行く

中日に久しぶりなる墓詣りはや子の墓に花挿されおり

墓参り久しぶりなる旧友に会い墓の前話しが弾む

病院に見舞いに行けば帰りがけベットにて言う「気をつけてね」と

あと一歩攻めていたるに敗れたりようがんばった栃飛龍関

3月20日(水)

松崎の西郷頼母の足跡よ依田勉三を輩出させる

敗れたる会津藩士よ志芽吹きぬ伊豆の松崎の地に

今月は年度末なり障害者福祉の会の決算をする

ぎりぎりの金のやり繰りどうにかに福祉会決算黒字に終える

栃飛龍が勝ちたることを確かめて幕内力士の観戦をする

3月19日(火)

淡あわとうすももいろの桃の花ぱちりぱちりと目を開きたり

風強く曇りたる日は外出を控えんとする黄砂怖れて

白浜の歌会があり風強きなか出席す皆に会いたく

老齢にめげずに歌を学び来る皆八十を超る人たち

磋牙司今日休場とアナウンス高見盛もいないのにああ!!

栃飛龍今日も敗れぬ磋牙司休場なれば興味半減

3月18日(月)

寄り合いに遅くなりしも毎日のブログ更新夜半に終えたり

葉桜となりはじめたり早咲きの桜がやっと静かになりぬ

葉桜にあれどこちらは山桜これ本来の姿であるよ

ようやくに芽を出している柿の木よ今年はしっかり実をつけてくれ

おれのごと生き抜いてみよ十字架のごとくに立てる一本の松

真直ぐに天に向かいてのびている産土に立つ一本の杉

水仙はすいせんらしく蒲公英はたんぽぽらしく咲いているなり

3月17日(日)

ようやくに殻を破りて産まれたるひよこのような白き木蓮

校庭はすでに桜が満開になっていたんだ今日気付きたり

木の瓜でボケと読むなり瓜でなく呆けにもあらずかわいい花ぞ

早朝に弟よりの電話あり母が家にて転倒すると

施設への子の迎えあり病院に母を連れ行くことを断る

3月16日(土)

ばっさりと枝剪(き)りたれば木蓮は細枝(ほそえ)に一つ二つ花咲く

純白の辛夷の花が咲いている彼岸近づく寺庭におり

叔父叔母の眠れる寺を訪れて純白に咲く辛夷見上げる

浪人の半年ばかり叔母の住む田無の家に世話になりたり

東大の農場があり広々と畑の続くなかの家なり

五十前の記憶がよみがえる墓前に頭垂れて祈れり

3月15日(金)

三月も早や十四日紅梅の花もすっかり散りてしまいぬ

採る人がもういないのか蕗の薹土手いちめんに花咲かせいる

早咲きの桜の花の花冷えか寒いさむいと炬燵にこもる

法皇の決定報ずるテレビニュース遠い世界のことと見ている

中国の主席は習近平氏に決る法皇よりも影響あらん

3月14日(木)

人の事に係わりていて短歌五首作るノルマを忘れていたり

会報の編集会議に出席し喫茶店まで付いて行きたり

あきらかに店主の計算違いだと言えども釣銭多く頂く

金銭に係わりのなき文芸にたずさわりおれば奇蹟は起る

文芸は限りのあらぬものなれば神も出て来る奇蹟も起る

3月13日(水)

歌会は三名欠席五名にて渡辺さんのお宅にてする

百二歳渡辺さんの誕生日まずは祝いて歌会とする

歌会に飛び入りがあり百二歳の渡辺さんをひと目見たいと

あらためて互選一位の原さんを会員みなで祝福をする

原さんが一位渡辺さんが三位わが歌会の健闘を祝す

3月12日(火)

明日の歌会はまず百二歳誕生迎える渡辺さんは

一本の河津さくらが木隠れにいま満開を迎えていたり

すっきりと穂を飛ばしたる枯すすき根方に新たな芽吹き待ちおり

暖かき二三日過ぎる伊豆半島今朝は再び寒さ迎える

ささやかなる額にありしも借りた金返すと書きて子の送り来ぬ

3月11日(月)

スピードで駆け抜けてゆく単車あり時を失う象徴として

ホームへの階段いっきに登りしもこうもなりたり七十歳は

久々の丹那トンネル長々し暗闇見詰め思うことあり

歌会の互選一位にわが一位に採っておりたる原さんがなる

原さんが一位渡辺さん三位わが会員の入賞続く

3月10日(日)

菜の花の明るきにおいかぎながら子供に帰れる心地するなり

うすぐもるごとき空なり雲なくも黄砂が空をおおいいるらし

明日は東部短歌大会で施設を帰る子を見られない

妻われに区長か短歌の役員かどちらか一つ選べと迫る

明日の東部の短歌大会で役員辞任の意思を伝えん

3月9日(土)

施設への門に入るを拒む子よつらきは父のわれも同じぞ

対岸に個人の植えたる一本の河津桜が満開となる

庭隅に静かに咲きてボケの花血の色したる涙をながす

テレビにて黄砂黄砂と報ずればなにやら息がつまる気がする

黄砂にておおわれている夕焼けをしょぼしょぼしたる目にて見上げる

3月8日(金)

いくつもの小花かたまり世のなかを明るくせんと菜の花が咲く

踏まれてもめげずに花を咲かせてる丈の短きたんぽぽの花

花びらに涙のごときしずく付け椿一輪地に上を向く

わが庭に育ち動けぬ紅梅が静かに花を散らし始める

「チューリップ」初めて発せし長男よわれの帰りを待たず死にたり

倒産の会社に給料得しことを思いていしがいつしか眠る

3月7日(木)

うぐいすの初音はいまだたどたどしホーホケホケと鳴いているなり

用水の池をのぞくも見当たらぬおたまじゃくしの姿が見えぬ

ジャガイモの次は里芋耕耘機使い耕す昼暑きなか

一回り二回りして固き土を耕耘機にて耕してゆく

畝を切り等間隔に里芋を置いてゆくなり四列がほど

暖かき日差しを受けてようやくに染井吉野も目覚め始めん

3月6日(水)

日を浴びて水際(みぎわ)のごときいぬふぐり一面青き波打ちており

幾たびも訪(と)われてついに承諾す区長とは何なにも知らぬに

歌のみを楽しみにして暮らせるも区長となればそうもゆくまい

区長とはいかなることをするのかと問えば心配いらぬと答う

国会の議員にあらず区長とはなりてのいない職務と知りぬ

3月5日(火)

花びらを振りこぼしつつさざんかは弥生初めの寒に耐えるや

梅咲きてうぐいす鳴けどしろじろと三月四日霜の置く朝

対岸は朝の日が差し湯気のごと靄が明るく山をおおえり

「ばか」といい怒鳴り散らして電話置く妹なれど何故に通じぬ

女性には女性の思考あるならん「女の浅知恵」われ怒鳴りしも

3月4日(月)

茜なす雲を頭上にミレー作「夕べの祈り」のごとく子とわれ

霜の朝ことに鋭く聞えくる時告げて鳴く雄鶏の声

川沿いに河津桜が咲いているうすももいろのかわいいさくら

ひと枝を折り雛壇に飾りたき河津桜のはなの下行く

にこにこと花を見上げて歩きいる早咲き桜に人々集い

枯すすき河原にありて見上げおり河津桜の満開の花

寒風に吹かれておれど早咲きの河津桜に心ぬくとし

3月3日(日)

規制にて幾代守られ来(こ)し家業いまタガはずれ倒れんとする

ひっそりと枝垂れ梅咲く庭のあり人住まぬ家となりて幾年

畑には横断中の黄の旗が横たわりいてなおも揺れおり

畑にて春猫ギャアと鳴いている薄日差したる昼さがりなり

日をつつみ黄金となりて浮かびおり亡き子に似たるひとひらの雲

流氷となりかたまれる雲を焼き今太陽が沈まんとする

3月2日(土)

枯れそうな受粉樹なれどけなげにも花咲かせたり五六輪ほど

受粉樹にようやく花が見え始め今満開の白梅ゆれる

小売業今危機的な状況ぞ近くの酒屋閉めるというや

スーパーで生活用品売る店で酒を売っては酒屋はもたぬ

TPP規制緩和は良いけれどゆるんだわが身に降りくるかなし

3月1日(金)

生みたての卵の白さ温かさ亡き子のごとくそっとつかみぬ

竹やぶにしばらく耳を澄まさねばうぐいすの声まだまだ聞けぬ

蕗の薹目星をつけておりたるがいつのまにやら採られていたり

爆風に吹き飛ばされて葉のあらぬ木々の枝間の星の輝き

自(みずか)らが蒔きたる種と叱りつつわれの言葉もしぼみてゆけり