今週の短歌

 わたしの歌歴(後藤人徳)
 昭和59年「賀茂短歌会」入会。現在編集発行人。
  歌集:「母胎」、「祈り」「わが家の天使」

以下に紹介します作品は、作ったばかりのものをそのまま書いています。推敲の手があまり入っていません。未完成の部分が多々あると思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。...作者より


茜差す雲を頭上にミレー作「夕べの祈り」のごとく子とわれ


5月31日(金)参考:日々の気持ちを短歌に(ブログ)

紫陽花は未だつぼみのままなるに早や入梅となりてしまえり

両の手に掬えるほどの水溜り底知れぬ空映し澄みおり

クラス会近づいているあと三日6月2日表参道

鶏(とり)の餌探して雨のなか歩く靴底のひび気にかかりつつ

株などの投資は今はしていぬが株価の変動気にかかるなり

5月30日(木)

天と地と君は分けるが分けないで天地と呼ぼうわれは分けずに

西洋は天と地と言い分けるなり分けないことがわれらの思想

太陽と月を同時に歌うなりひむがしのうた人麿の歌

西洋にあこがれたるや啄木の分かち書きする歌を読みおり

西洋は狩猟民族こまごまに裂きて食べたる姿を思う

5月29日(水)

高校の何年生か文化祭「有楽町で逢いましょう」唄う

遺伝子があるとするなら父の声歌好きなこと臆病なこと

民謡も踊り浪曲歌うのもとても父には敵(かな)わないわれ

投稿せし俳句載りたる新聞を父の手箱に死後見つけたり

商業の高校出(い)でて大学へ行くと決めしを父許したり

子のわれの大学合格通知なり父の手箱の底に黄ばめり

5月28日(火)

事務的に施設に預け帰るわれうらめしそうに子は見ているか

メスオスの区別分らぬひよこたち餌箱に入りはしゃぎ廻れり

題詠「ラジオ」

縫製を生業(なりわい)とせし祖父にしてラジオ聞きいしミシン踏みつつ

孤独なる祖父の姿よ黙々とラジオ聞きいしミシン踏みつつ

亡き父の録音したるラジオ寄席父の笑いの声が大きい

5月27日(月)

レジを待つ妻の後ろにササニシキあきた小町にひとめぼれ米の袋をしばしなでおり

生きるとは食べることだと知りおれど買物するをわれは好まぬ

物余り買い物出来る幸せを感謝せんとは思いておれど

子も妻も満足そうな顔をする買物するを喜んでいる

沢山の物あることを人間は喜ぶものよスーパーにいる

5月26日(日)

恐竜の肋(あばら)のごとく夏草の中に埋もるる廃園ハウス

明日葉の根を食い荒らす猪に椿の根方穴ほられいる

十三個の卵抱(いだ)いたウコッケイ六羽孵りて後は失敗

雌鳥が二羽いて一羽巣につけば抱える卵がどんどん増える

鶏(にわとり)は餌をもらえる猪は自分で探し生きているのだ

5月25日(土)

道の辺に蓮を植えたる泥田ありその花咲くを待ちつつ歩む

泥の田に今年植えたる蓮なればいまだ小さき葉がまばらなり

椎の木の根方にしばし憩うとき初夏の枯れ葉が道を転がる

四国沖南海トラフ赤線がうねりつつ伸び伊豆に接する

地鳴りする地震5強に遇(あ)いたるは二十年前熱海でのこと

5月24日(金)

給油するたびに言われる擦れているタイヤ四本今日取り替える

車検まで待とうと決めていたタイヤやっぱり四本今日取り替える

ひやひやとしながら運転していたがタイヤ四本今日取り替える

黒っぽく溝もくっきり彫られたるタイヤ四本今日取り替える

陽炎の立つ熱き道走るためタイヤ四本今日取り替える

5月23日(木)

真剣に歌を作ったことあるかどこかに忘れてきたかもしれぬ

真剣に歌ったことあり六歳の幼稚園での学芸会で

真剣に泣いたことあり十歳の校長室で𠮟られたとき

真剣に自己紹介をしたるときすこしどもってそれがよかった

真剣に生きてるときはひやひやで冷や汗ばかりかいてる感じ

5月22日(水)

幾筋も茜に染まる雲の帯やさしき人の思い出に似る

総会がどうやら無事に終りたりミスはあっさり訂正願う

行く先の甲府を箱根と刷られるは去年のデータの修正忘れ

パソコンは便利だけれど楽をする気持で使うとミスにつながる

親鳥の羽の下よりむっくりと頭を出せり一羽のひよこ

何羽ほど孵るりておるや二羽三羽羽に隠れて鳴く声のする

5月21日(火)

歌会に心得述べているなれどわれはいかほど実践するや

明日(みょうにち)は総会なるにいまごろになりて資料のミスを見つける

謝(あやま)ればすむことなれどその責めはわれのみならず会長に及ぶ

明日に迫る総会資料ミスいかに説明したらいいのか

金額は完璧なれば摘要のミスを謝るほかあらざらん

昨年のまま摘要を打ち出すという失態をわれは起こしぬ

懺悔するこころを歌にすることでいくぶん許されようとしている

5月20日(月)

黒船の祭はジャズの生演奏海兵隊の制服まぶし

両側に見物人が連なって今パレードが始まらんとす

パレードの先頭きるは自衛隊ブラスバンドの軍艦マーチ

白昼に女性が肌を露出して踊るまぶしきこれカーニバル

昔から土佐との縁がある下田よさこい踊りうねり踊れる

制服がまぶしく白き海兵隊奏でる「星条旗よ永遠なれ」を

5月19日(日)

新聞に載ってましたと法事の席和尚さんとの話がはずむ

啄木の話となって盛り上がるそうそう彼の家はお寺だ

生きている生活してる自ずから歌もそこから生まれるならん

早今日は四十九日ぞ君好きなカラオケ一曲歌いたい気分

三橋美智也の「りんご村から」「古城」など君好きな歌心で歌う

5月18日(土)

障害者福祉会その総会に向け決算書おさらいをする

富士山が見えればやはりいっせいに声を上げたりマイクロバスに

研修の旅行といえど富士山を見ればおのずとなごやかになる

雪かぶる富士の高嶺の雄々しさにただうっとりと見惚れていたり

雲抱き富士の高嶺は聳えたり真正面に真向いている

曇りたる空の下にはうす黒き海原つづく光もとめて

出来たての新東名をひた走り一路浜松に向かうマイクロ

山浦氏創設したる知的障害児施設の小羊学園

障害をもち生きている子供らよ栄光は今君たちのもの

5月17日(金)

明日(みょうにち)は施設見学するために浜松に行く五時起きをして

障害者施設の遅れハードではなくてソフトを重視して見ん

分るとは分けることだというように世はどんどんと細分化する

障害者福祉会での総会のために書類のおさらいをする

栃飛龍前へまえへと突き進み今日は我慢の勝利を得たり

5月16日(木)

唇を紫にして桑の実を食(は)みたることを忘れずにいる

桑の葉は糖尿病に良いという実はいかなるやひとつ食べたり

養命酒陶陶酒またマムシ酒色々試し今養命酒

東洋の医学見直し部分よりまず全身を正さんとする

全体でものの把握が出来ることむしろ賢い証拠でないか

5月15日(水)

散る花を何度詠みしか入院の夫のことを君は思いて

散髪後さっぱりしたる心にて暑き日差しにめげず歩きぬ

アメリカに銃の事件がまた起るアメリカの安定は世界の安定

アメリカにあらゆる善も悪もあり差別を越える力もあらん

父の日は何が良いかと母の日の終えたるばかり娘のメール

5月14日(火)

栃飛龍磋牙司ああ同郷の力士同士の闘いとなる

栃飛龍勝ち磋牙司破れたり上昇下降の明暗を見せ

ああ今日は栃飛龍また磋牙司横綱日馬富士まで負ける

「お母さん助けて詐欺」よ母性とか日本人(にっぽんじん)の心を狙う

カラオケの自分の声を録音し眼(まなこ)を閉じて聞きほれている

5月13日(月)

あじさいのつぼみつぶつぶ青い粒みなかたまりてじっとしている

つぶつぶのつぼみなれどもほんのりと朱の色帯びるここのあじさい

障害を頭に持てばしょうがないビール一箱破棄されにけり

ふところに雲をいだいて広びろとひろがっている今日の青空

青空が似合うと思う水田にさざなみ立ちてかがやいている

5月12日(日)

ぽたぽたと雨粒がいまわが部屋の洗面器のなかにしたたりている

いつからかわたしの部屋に雨漏りがするようになる涙のように

雨つぶが洗面器打つ音聞きて今宵はここに眠る外なし

カラーベストの屋根をトタンに変えてからああ雨漏りがするようになる

とんとんと不規則に鳴るあまだれよわれの頭を割らんとするか

5月11日(土)

田の中にすっくと姿映しいて白鷺一羽動くともなし

今日の糧(かて)探さんとして動けるか足元の蟻動き忙しき

複式の簿記から始め単式はついに習わず今日となる

分けることが素晴らしいことと教えられ散り散りとなり今日に至るか

単式の良さを習わず複式の簿記に育ちて今に至るも

全体で物を判断出来ること日本人はすぐれていたが

5月10日(金)

影のなき観念だから血が出ない悲しくなりて時計を眺む

実体のない観念の歌ばかり作っているかわが傾向は

体もて働くことが遠くなり観念ばかり発達をする

マイク式カラオケ機器を購入しまずは歌えり「北国の春」

カラオケで短歌の会をなごやかに出来たらいいとずっと思えり

5月9日(木)

太古よりかわらぬ光映りいて代?き後の水田(みずた)静けし

歌詠めぬうたできぬああ何故(なにゆえ)に短歌をわたしは作くっているのか

日本の心を思う失っていけないものと短歌を思う

記紀歌謡万葉の世より続きいて滅びざるもの短歌と思う

日本が日本の心純粋なこころが短歌そう思いたい

5月8日(水)

楽しみにしていた李(すもも)強風にすっかり落ちて見えなくなりぬ

貴重なるウコッケイの卵落としたり割れてしまえば捨てる外なし

二羽のうち一羽巣籠もり一羽は産みああ十一個抱えていたり

何のために生きているのか結局は自分のことしか考えていない

閉ざしたるわれの前では山も木も全て閉ざせる世界となれり

5月7日(火)

川べりに山藤の花合歓の花そろい咲きおり遠く見下ろす

連休が終り田植えもおわりたり黄金に稔るときはまだ先

梅の実がやっと大きくなる時になぜに激しく風吹き荒れる

キーパーがゴールを守るごとくして八つ手よ風を受け止めている

ゴミの日も休日なればお休みか重き袋をまた持ち帰る

5月6日(月)

施設より戻りたる子は眠りおり昨夜ねむらず昼の一時を

施設より帰りたる日は眠らざり一晩中に声を上げてる

天にその紫の花かかげおり桐は藤との違いをみせて

刀などとうに売りしと金繰りの厳しき酒屋の実情を言う

店屋敷全て担保になりおれば実家を継ぎし弟思う

5月5日(日)

何ゆえにかく澄めるのか泥の田が静まりたれば鏡のごとく

あじさいのつぼみの粒がぽつぽつとかたまりている咲くはまだ先

動かざる山に茂れる木々の葉を激しく揺らし風吹き渡る

やわらかき柿の若葉はしたたかに風やり過しまた静まりぬ

瞬間の文芸短歌千余年つなぎ続けりタスキのように

5月4日(土)

ゴールデンウィークはみんなあつまりて遊びのように田植えしている

ゆうゆうと箱根の山を越えて行く雲のようには今はなれない

ヨハネ伝読みつつ思う言霊だことだまのことを言っているんだ

十字架はプラスのことかマイナスをプラスに変える最たるものか

万葉の心を繋(つな)ぐ子規茂吉文明のあとタスキは誰に

記紀歌謡時代の心をつなげんとしたか人麿赤人なども

5月3日(金)

携帯が見つからぬゆえ早速にクリーニング店に電話してみる

ポケットはチェックしてます問いあわすクリーニング店店員は言う

孫たちが来るというのに携帯を何処に置いたか見つからずいる

肉体をたとえ抹殺出来るとも魂までは消す術(すべ)なからん

魂は目に見えねども連綿と繋がってゆくそう感じてる

5月2日(木)

会計を預かる者の要諦は一にも二にも愚鈍なること

報酬はいろんな人に会えること金銭にては計れないこと

代?きの濁り治まる水面に空と里山映り静けし

機械にて植えたる苗は小さくてあらかた水の中に隠るる

駅伝といえばわたしは思い出す忠臣蔵の早野勘平

5月1日(水)

低迷の柔道界か全日本選手権での穴井氏の勝ち

へらへらと笑う姿が大写しされたり穴井隆将の勝ち

柔道の伝統いずこ勝利者がただへらへらと笑っているか

高校の佐藤和哉の戦いはきびきびとして見応えがあり

太古から変わらぬ光呑みこみて水を張りたる田圃静けし