今日の短歌 NO.16

 わたしの歌歴(後藤人徳)
 昭和59年「賀茂短歌会」入会。現在編集発行人。
  歌集:「母胎」、「祈り」

以下に紹介します作品は、作ったばかりのものをそのまま書いています。推敲の手があまり入っていません。未完成の部分が多々あると思いますが、参考にしてもらえれば幸いです。...作者より
何歳かなんという名か炭のごとく焼かれていたり原爆により

歌集を作る作ると言って去年も暮れました。思い切らなければ、自信のある作品を待っていたら一生出来ないかもしれません。まあ、そんなに弱気にならず、楽に一年過ごしましょう。明るく明るく、光を求めて暮してゆきたいと思います。
 


2月29日(水)参考:日々の気持ちを短歌に(ブログ)

ふもとにて暮らせし高校三年間気にかけず過ぎしこの富士山を

素晴らしき人の身近におりたるも日々過ぎ去りし得ることもなく

愚かなる自分と今は悔んでも過ぎたる日々は取り返せない

青春の心は辛し青々としたる松の葉雪を被(かぶ)れリ

一点のやましいことはあらざるとゆうゆうとして白鷺飛べり

寒い日は歩くにかぎる足もとがぽかぽかとして頭が冴える

月28日(火)

寝静まる頃を待ちしか冷蔵庫あさる子の音寒夜にひびく

朝の陽(ひ)に輝く雲は角(つの)なるかいや鼻上げて叫ぶ象なり

目をこらし探せばあるある鶏(とり)の餌野の道端にたんぽぽも咲く

水かさの増したる川に二羽の鴨水脈(みお)ひきながら上りて行けり

飽食の証(あかし)と言わんぞろぞろと散歩しているその中のわれ

トックリのセーター好み着ているが首輪をしたるごときわが影

2月27日(月)

南天の実を食べつくすひよどりよいつのまにやら忍者のごとく

個人主義時代に育ち単車にてのツーリングの味汝(な)れ覚えしか

曇りたる空に向いて白梅が思うぞんぶん枝を伸ばせり

昨晩の雨のなごりをとどめいる川は水かさ増して鳴りたり

枯れるのは寒さに耐える方便(ほうべん)とススキは風に揺れて輝く

けもの道無くなりたるや今日もまたたぬき一匹轢かれておりぬ

花梅と購入したる紅梅の花咲き盛るのちを思いぬ

2月26日(日)

さんざんに雨に打たれて白梅も目覚めたるらし開き始める

大学の受験に捨てし数学をわれも学ばず五十年経つ

姨捨(うばすて)の楢山節考日本の話他国のことにはあらず

坊さんも車を運転するんだな当然なれどしばし見ている

もう春と喜びおれば雨降りて冷たい風がまた吹き始む

おごそかに神宿るごと霧おおう里山を今日仰ぎ見るなり

2月25日(土)

ひと粒の砂にたとえんわが短歌願わくはこの露と光れよ

梅の香(か)に誘われたるか雄の雉われを見付けて飛立ちにけり

ようやくに寒さ弱まり遅れおる河津桜も開花急がん

施設より子の帰り来る明日は雨のマークをテレビ映せり

日曜は妻いなければスーパーで昼の食事を買い子と食べん

2月24日(金)

温かき雨に打たれて白梅がみないっせいに開き始める

雨が降る激しく雨が降りている雨漏り怖るるわが家(や)を打ちて

ようやくに雨漏り止みし天井がかなしきまでに弓なりとなる

啄木の亡くなりし月四月こそわが長男の死にしその月

チューリップ土を突き上げ出(い)でくれば心の内に子の忌日湧く

チューリップ初めて発せし長男がわれの帰りを待たず死にたり

2月23日(木)

ひよどりのいぬ間を狙い目白一羽あたりうかがい蜜を吸いおり

紅梅が満開となり目白が来われのこころに春がきざせり

千万と軽く言うけど家や土地売っても半分くらいじゃないか

マンションを買うに千万二千万借りねばならぬ息子らの夢

ひよどりの被害を避けた南天を切りて一輪挿しに差したり

2月22日(水)

のうのうとしているときに数百万の子らの命が消えなんとする

今まさに数百万の子の飢えがアフリカにあるこの現実よ

アフリカに飢え死ぬ子らのこと思いまたすぐ忘れ眠らんとする

飽食の世に住み長く生きており無力の自分を思い知らされ

地球さえ宇宙のなかで米粒のあるいはもっと小さき塵か

砂粒に満たぬ小さな存在のわれなるも今涙ながれる


2月21日(火)

題詠:子

産みたての卵つかみて思い出(い)づ逝きしばかりの吾子(あこ)のぬくもり

題詠:手

うつむきしちさなちいさな八つ手の葉天狗の団扇となりて陽を浴ぶ

学校の坂登るとき両側の桜はいまだ蕾固かり

白梅は満開なれど学校の坂の両側桜は蕾

ひよどりの縄張りなれば紅梅に目白鳴く日の少なくなりぬ

ようやくに一分咲きたる白梅の枝を仰ぎて花びら数える

2月20日(月)

粉雪というのであろう葉に土にうっすら積もる伊豆の早朝

山の端(は)に雲たむろして日の光もらすまいぞと包み込むなり

天城こえほっとしたるもつかの間にうす日の空より雪降りてくる

凍りたるためにはあらず古きゆえ悲鳴のごとき音たてる窓

ようやくに赤き椿も咲き始めわが家の庭にいろどり添える

2月19日(日)

アフリカの食料不足千万人百万人の子等が危ない

飽食を恥入るばかりアフリカの飢えたる子等の命危ない

青き空日は輝けど寒き風吹きつけるなり歩く前より

日は差せどひんやり寒き風が吹く頭の中まで凍らすごとく

遅咲きの白梅ちらほら咲き始む二月中旬伊豆の下田に

2月18日(土)

雄鶏(おんどり)が一羽死にたり特徴のある時告げる声が消えたり

一ポイント一円なりて久びさに三十ポイント得たる喜び

毎日のブログ更新続けいて三十ポイント得たる喜び

歌会の選評せんと読み始むまるでマイウエイのような一首目

無理じゃない短歌で一生を語るのはマイウエイには勝てないだろう

2月17日(金)

紅梅は咲いているのに肝心の河津桜が咲かぬと歎く

一本の杖に身まかせ歩くより腕組まん九十二歳の母よ

ご主人を亡くせし友は答えたり夕暮どきがもっとも寂し

アナログを線と感じてデジタルは点と感じるこれ正しいの?

アナログがむしろ人間的なのか私の理解は間違ってるか

2月16日(木)

白梅も花咲き始むしばらくは梅の花にて心慰む

一株の福寿草今五株ほど冬ざれの庭増えて広がる

冴えざえと白さざんかが咲いている理性と謙虚の花言葉持ち

えらい人立派な人になりたしと思いしははるか遠きことなり

一日が半日いやいや一時間十分一分一秒一瞬

三日月となりたる月が紅梅の盛りとなるを刈りたいだろう

2月15日(水)

春雨のごときが止んで温かし息おだやかにしつつ歩めり

曇り空掃わんとすか竹箒さかさまにしたる銀杏の大樹

ようやくに見ごろとなりたる紅梅が雨に打たれて雫をたらす

腰痛にあらず背中の筋なんだ痛みが消えず五日過ぎたり

東電の再生祈る枝野氏の国営化では時代に逆行

国鉄も電電公社も民営化したに東電を国営化するな

2月14日(火)

新聞の今日休刊日いつもならもうこの辺で出会うところだ

癲癇の病院に子を連れてゆく天城峠は今日凍れるや

東名を走りて行けば島のごと伊豆半島が霞みて浮ぶ

睡眠薬四錠飲めど眠られぬこれから脳波を受ける子なるに

薄暗きなか横たわる脳波室睡眠薬に子は眠らざり

案の定雨降り出せり天城峠なんとか凍らずトンネル越える

2月13日(月)

一日が一生なればただ今は十代なるか朝日まぶしき

忠魂碑の傍を通れば英霊の声か朝日に囀る小鳥

二千年前に聖書の予言せし天災はこれか眼(め)をばつむれる

よく晴れた空を仰いで有難う御座いましたと言いたき気分

布団でも干せばよかった日のかげる三時まわって思いつきたり

食べ物が何かあるのか裏山に猿がこのごろ姿を見せぬ

題詠:声

津波にて九死に一生得たる人「水をください」第一声よ

2月12日(日)

蕗の薹こんなところに出(い)でており天ぷらにして今夜食べよう

新潟の友よりもらいし福寿草雪を知らない伊豆の地に咲く

福寿草庭に咲きたりそこのみがきらきらきらと輝いている

マスクして子は施設より帰りたりインフルエンザ蔓延すると

ようやくに庭に咲きたる紅梅を見上げておれば暖かくなる

2月11日(土)

紅梅が咲き初めたり早速にめじろが仲間とつどい鳴いてる

寒ければ一気に梅が開かない昨日とあまり変わりていない

遅咲きの白梅の芽もふくらみてぽつぽつ白き色が目につく

寒むければ家に籠りて炬燵にて国会中継見つつ居眠る

年金をもらえる今の幸せを思い国会中継を聞く

原因の分からぬ背中の痛みあり風呂に入りて早く眠らん

2月10日(金)

満ち欠けは自然にまかせ今日ひと日(ひ)この生命に足りて生きたし

啄木よ今こそ語れ新しき明日(あす)の来(きた)るを信じると言え

新しき明日(あす)とは何かいまだ来ぬあしたに古いあすがあるのか

いち早く咲くが自慢の河津桜祭になるも蕾ばかりぞ

屋台などそろっているがまだ咲かぬ河津桜の下を行き交う

2月9日(木)

妻は今日松原のぶえショーに行き留守をビデオの「生きる」を見たり

歌会の選歌しているその基準ずばりと言えば誠実な歌

誠実の歌とは何か正直に気持ちを歌った歌となろうか

あきらかに個に注目し誠実な個に基づいた正直な歌

満月となりたる月が二分咲きの紅梅の枝静かに照らす

2月8日(水)

「御飯よ」と妻が呼ぶなりどちらかか分からぬけれど大声で呼ぶ

たくさんのつぼみふくらみ紅梅が手のごとき枝天に揺らせり

暖かき風強ければ梅の枝(え)にふくらむつぼみたちまち開く

ようやくに一分咲きなる紅梅を二階の窓に見下ろしている

通る人眺めていたり亡くなりて椅子のみ家の前に残さる

2月7日(火)

暖かい雨が降りだし一輪の梅がようやく四輪となりぬ

草むらを逃げる獣(けもの)の後ろ姿猫かもしれぬ狸かもしれぬ

啄木の死後百年となりにけり今も生き生きわが内に住む

顎(あご)細くなりたるわが子おどけつつ施設への道送りて行けり

汝(な)れの住む所はここぞ施設へと子を預け来てつぶやいて去る


2月6日(月)


江戸時代三百年とするなれば維新以後まだその半分ぞ

 

維新後も戦後も遠くなりたるがどれほど日本は変っただろう

 

草は枯れ餌のとぼしきこの時期に今日も卵を二個産みくれる

 

裏山に潜(ひそ)める猿の群れがおり今日はどうやら静かに暮れる

 

癲癇の薬がきいて発作なく暮るるはまさに今日の天恵


2月5日(日)

この三日一輪のまま変わらざり観梅の楽しみ明日にもち越す

いつまでも咲かぬ梅の木咲けさけといわんばかりに風枝揺する

豆まきの終りし寺に来たりけりトラックがゴミを積み上げている

今日の日も早や山の端にかかりたり待ってはくれぬ地球の動き

強風に煽られ揺れる木々抱(いだ)きうおんうおんと山動きだす

立春に合わせるような強き風春一番と呼びたきほどに

強風に煽られたればたまらない枯れ枝あまた道に散らばる

2月4日(土)

一粒の砂にも足りぬわが短歌願わくはこの露と光れよ

対岸の寺より読経が聞えくる二月三日の今日は節分

寒を越し梅は咲くのかこの寒さ今日の寒さに耐えよ蕾よ

水道もボイラーもまた凍りたり復帰したのは朝十時半

水道が凍りし話題期せず出る文化会報編集会議

象が今鼻上げ叫ぶゆっくりと夕焼けている空に浮びて

2月3日(金)

昨日(さくじつ)に一輪咲いた梅の花今日も宝のごとく一輪

歌会の選歌の歌稿が届きたり百五十首の中より十首

高鳴けるニワトリの声群れる畑の猿におびえ叫べり

大群というほかはなしゆうゆうとサルが畑の大根を食う

この寒さ食べ物求め猿どもが山から下りて畑を荒らす

2月2日(木)

がんばって赤き蕾をつけれどもなかなか梅が開いてくれぬ

着ぶくれしわが影ゆっくり歩きゆく宇宙飛行士でもあるまいに

ようやくに一輪開く南風強く揺られる紅梅の枝

毒舌を身上とする眞紀子様ご主人を今何と評すや

龍馬とか維新とかいう新しき明日を作らん前に進まん

新しき明日(あす)の来るのを信ずという君の言葉に嘘はないんだ

2月1日(水)

年取れば時の速さを実感す早や山の端(は)に日が沈みおり

夕暮は途端に寒くなるゆえにそれでなくとも寂しき日暮れ

依存症ではなくともかく好きなんだ楽しんで飲む牧水の酒

啄木と不思議なえにし臨終を看取りし歌人は牧水一人

物忘れは激しくなれば何とかいうサプリメントを試さんとする